2022.4.1

【ソラミチシステム 田浦貴大】薬剤師をシステムでサポート。目指すは日本の医療費削減 

StoryNews編集部

株式会社ソラミチシステム 代表取締役 田浦 貴大

株式会社ソラミチシステム 代表取締役 田浦 貴大 

課題解決キーワード「刃を研ぐ」(『7つの習慣』より)、「海賊王におれはなる」(『ONE PIECE』より) 

株式会社ソラミチシステムは、調剤薬局内におけるシステムの企画や開発、販売などを事業の柱としている。薬剤師の負担を軽減するクラウド電子薬歴「CARADA 電子薬歴 Solamichi」が主力製品で、2021年度に、グッドデザイン賞を受賞した。

ソラミチシステム代表取締役 田浦貴大が目指すのは、「薬剤師のさらなる活躍」「予防医療」「医療の効率化」。薬局業界全体や日本の医療全体の課題解決だ。

田浦の課題解決への強い想いは、どのようにして生まれたのか?始まりは自身の地元、熊本のシャッター通りと化した商店街だった。 

地元の商店街を救いたい 

祖父が商売をしている商店街の活気の無さに気付いたのは、中学生の頃。地元、熊本の商店街を何とか救いたいという想いが自然と芽生えていた。 

田浦は大学時代に自らサークルを立ち上げ、さらに居酒屋まで経営する。その目的はシャッター商店街を救うことだった。この頃からモチベーションは、地域や社会の課題をなんとかしたいという想いで、この想いが、田浦の行動を決めていた。さらに、社会の役に立つ事を始めるには、組織づくりが大事だと気づき始める。 

経営者の責任の重さ 

大学卒業後に上京し、社員教育のコンサル会社に入社した。 

「年間100人近くの社長に会えるという仕事に魅力を感じた。独立して自分で会社を経営することを意識していたと思う」(田浦) 

その頃、日本経済を襲ったのはリーマンショック。田浦が慕っていた上司もリストラされた。自分よりも何倍も仕事のできる上司のリストラに納得がいかず、田浦は社長に直接反発の声をぶつけた。 

当時の田浦はビジネスの基本さえ知らないような新人だった。敬語の使い方さえきちんと身に付いていない。週一の読書レポートを求められても、A4一枚にフォントを所定の3倍の大きさで文字を埋める。そんな社員だった。不満の気持ちを抱えていたが、業務をこなすことしかなかった。 

ようやくボーナスが出たタイミングで「僕が奢りますと社長を酒に誘った」(田浦) 

生意気盛りの新人だった。 

そこで社長が語ったのはリストラの事だった。億単位の借金を抱えて経営環境が厳しいなか、会社を辞めても食べていける人間から順番にリストラしたと言う。「田浦に『首を切るような社長だと思わなかった』と言われショックだった」と、いつの間にか社長は泣きながら話をしていた。 

「社長も悩んだ末に苦しい判断をしたことを初めて理解した。経営者は背負っているものが違う。自分も早くこのレベルで働きたいと思った」(田浦) 

営業で成果を出す 

社長と話したことがきっかけで、早く結果を出さないと経営者になれないと考えを改めた。 

「それまで本を読むのも嫌いだったが、初めて自分でテレアポの本を買って、その通りにやってみた」(田浦) 

みるみる営業で頭角を現すようになる。中小企業の経営者や、上場企業の役員から「お前、面白いな」と気に入られることが増え、トップセールスへと成長した。本に書いてあったのは、それまでに上司に言われ続けていたことだったが、自ら実践してみてその意味がやっと理解できた。 

知識0からのスタート 

自信をつけた田浦は20代半ばで九州へUターンし、念願の独立を果たす。営業コンサルのビジネスでの独立だった。 

最初に受注したのは、薬局向けサービスの企業の案件だ。薬局向けにレセプト(診療報酬明細書)を作成するシステム、いわゆるレセコン(レセプトコンピュータ)や電子薬歴を販売する会社だった。 

それはリストラのプロジェクトだった。現営業部長に退職を勧告し自身が営業部長を代行するというもの。リストラに関わったのも初めてだし、薬局や医薬品業界の知識も皆無だった。 

薬局業界のさまざまな課題 

そして田浦の薬局向けの営業部長代行としての仕事が始まる。 

「薬局に入り浸り、事務作業から採用まで全てを見た。業務範囲を広げて徹底的に現場を学んだ」(田浦) 

5年ほど薬局の仕事にどっぷりと浸かった。見えてきたのは「薬剤師の負担や非効率な業務」「経営層と現場のギャップ」「異なる組織で働いている医師と薬剤師のコミュニケーションの難しさ」など、さまざまな課題だった。 

ある時「田浦さん 私、薬剤師やめたいです・・・」と新人薬剤師が話しかけてきた。勤務の初日の疑義照会(処方内容に確認事項や疑問がある場合、処方医に問い合わせる業務)で処方内容について、処方元の医師に問い合わせたところ、ひどく怒られたそうだ。それからは、薬剤師としての誇りよりも、医師とのコミュニケーションの取り方に気を遣うことが多くなってしまったという。 

薬局の現場の課題をどうしたら解決できるかと考え、田浦が目を付けたのは電子薬歴のシステムだ。薬剤師の負担を減らすため、電子薬歴をクラウドで実現する構想を温め始める。 

体調を崩し「健康」の大事さに気づく 

薬局向けビジネスに没頭したその頃、田浦の営業スタイルはいわゆる「飲み営業」だった。酒の席でコミュニケーションを図り、受注につなげていた。 

しかし、日々の暴飲暴食が祟って、体重は増加していた。ある時、体調不良の状態のまま飲酒し救急車で運ばれる。医者にもダイエットを勧められた。 

そこで出会ったのが、糖質制限のダイエット。炭水化物の摂取量を抑え、タンパク質の摂取を増やす、赤身肉を食べて痩せるダイエットだ。 

自らのダイエットで着想を得た田浦は、営業代行で薬局のビジネスに取り組む傍ら「株式会社一生健康」という会社を併せて設立する。この会社で、赤身肉がメニューの飲食店とパーソナルジムを連携させた健康サービスを開始した。 

自分自身が体調を崩したことがきっかけで、「健康」こそが、自分がビジネスで取り組むべき大事なテーマだと気づく。 

共同経営者の癌 

こうして健康サービスの会社をスタートさせるが、その後間もなく、なんと、株式会社一生健康の共同経営者が癌になってしまう。 

「家族が癌になったようなもの。家族を守らないといけない」(田浦) 

多くの経営者を見てきた田浦は、友人どうしで起業した会社は仲間割れするが、親族で起業した同族経営の会社は長く続くと考えていた。そこで社員は家族だと考えて組織作りをしていた。 

前職の社長の助け 

しかし、飲食業の経営は難しかった。さらに共同経営者の癌でたちまち会社は資金難に陥った。そんな時助け舟を出したのは、最初に就職した社員教育の会社の社長だった。2,000万円の出資を快く申し出てくれた。 

かつて自分が経営者を志すきっかけをくれた社長にここでも救われた。これまで、営業コンサルや社員教育のビジネスで何百という会社の経営者に会ってきたが、最もかっこ良いと思う経営者だった。こうして田浦は何とか会社の経営をやり繰りしていく。 

エムティーアイとの出会い 

田浦は健康サービス事業を安定して継続させるため、電子薬歴事業にも注力していった。すでに薬局のビジネスには精通していた。 

また、企業向けのパーソナルトレーナーを使った食事と運動の健康研修が好評のサービスとなっていた。 

その健康研修を提案し出会ったのが株式会社エムティーアイだった。ヘルスケア事業を展開する東証プライム上場企業だ。 

きっかけは健康研修だったが、エムティーアイは、田浦の電子薬歴をクラウドで実現する構想を気に入ってくれた。同社の前多社長の一言が田浦の心に火を点ける。「いずれ、スマートフォンで自分の医療情報を取得できる時代になる。そのハブを一緒に作ってほしい」。こうしてエムティーアイのグループ会社として、株式会社ソラミチシステムが誕生した。 

システムで薬剤師を助ける 

開発されたクラウド電子薬歴「CARADA 電子薬歴 Solamichi」は、使い手である薬剤師目線での開発にこだわり、2021年度グッドデザイン賞を受賞するなど、見やすく使いやすい画面設計に定評がある。また、特許を取得した「指導ナビ」を搭載している。処方内容から監査や服薬指導で注意すべき点を薬歴から提案するナビゲーション機能だ。 

「医師は一つの専門分野の診療に特化している。一方で、薬剤師は膨大な種類の薬の全てを扱わなければならない。システムでサポートするのが我々の役目だ」(田浦) 

薬剤師目線のクラウドシステムが構築できたのは、田浦のこれまでのキャリアがあってこそだろう。 

「海外は医師と薬剤師に上下関係や忖度が無い。処方箋を薬剤師がしっかり二重チェックする役割が成り立っている」(田浦) 

医師、薬剤師、それぞれの専門家が薬の処方と調剤を分担して行うのが医薬分業だ。神聖ローマ帝国のフリードリヒⅡ世が毒殺を怖れ、医師の処方した薬を別の者にチェックさせたのが起源と言われ、ヨーロッパでは800年近い歴史がある。 

医療の課題解決のために刃を研ぐ 

日本の医療は、変革期を迎えようとしている。電子処方箋が本格始動し、PHR(パーソナルヘルスレコード)の機運も高まっており、ソラミチシステムに求められる期待も大きくなるだろう。薬局と患者の距離を縮めるSMS連携も視野に入れている。 

「日本はこれから労働人口が減っていく。医療費はどんどん上がり、若者の負担ばかりが増えていく。そんな未来にしたくない。」(田浦) 

田浦が影響を受けた本は『7つの習慣』だそうだ。7つ目の習慣では「肉体」「精神」「知性」「社会・情緒」の4側面で刃を研ぐことで、私的成功だけでなく公的成功を手にできると説かれている。 

「実はもうひとつ好きな本が『ONE PIECE』、これを言うと社員に笑われるが、真面目に医療業界の海賊王になりたいと考えている」(田浦) 

「この海で一番自由な奴が海賊王」は主人公ルフィの言葉だ。海賊王は、自分や仲間に責任を持ち、自由な夢で未来を創り上げる者とも解釈できる。この考え方は『7つの習慣』の哲学とも共通する。 「健康」をテーマに、仲間を大事にし、顧客である薬局、社会とのシナジーで成功を目指すソラミチシステムのビジョン。原点はこの2つのストーリーにあるのかもしれない。

「これからの未来を生きる子どもたちが、夢を持てる社会にしていきたい。だからソラミチシステムは医療の効率化と予防医療で、医療費の削減に取り組んでいる」(田浦) 

日本の医療の課題解決という大海原での航海は始まったばかりだ。 

【田浦 貴大のプロフィール】 

株式会社ソラミチシステム 代表取締役 

福岡大学卒業後、社員教育コンサル会社に入社。 
3年でトップセールスとなり独立。 
医療系システム会社の営業コンサルタントとして営業部を統括し、中規模チェーン薬局のエリアマネージャー業務の委託を受け、エリア管理・新卒採用業務・新卒研修などを担当。延べ1000名以上の薬剤師と携わる。 
2018年に、株式会社エムティーアイの子会社である株式会社ソラミチシステムを設立し代表取締役に就任。クラウド電子薬歴システムの提供を開始し、1年強で700件を超える薬局に導入。 
日本の医療プラットフォーム構築を目指し、薬局向けシステムを展開している。 

【田浦 貴大のSTORYを作った本】  

『7つの習慣』~人格主義の回復~ 著者:スティーブン・R.コヴィー 訳:フランクリン・コヴィー・ジャパン 出版社:キングベアー出版  
『ONE PIECE』 著者:尾田栄一郎  出版社:集英社 

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