2023.1.26

【フィナンシェ 國光宏尚】DAOの本質的な価値は「報酬、インセンティブの民主化」にある

StoryNews編集部

フィナンシェ 國光宏尚

株式会社フィナンシェ代表取締役 ファウンダー

株式会社Thirdverse 代表取締役 ファウンダー

國光 宏尚

なぜ、Web3が急速に注目を集めるようになったのか。第1回では、新しいテクノロジーによるパラダイムシフトを軸に、Web3が台頭する社会的背景について見てきた。第2回では、Web3を構成する要素として欠かせないDAO(自律型分散組織)について、國光氏の考えを聞いた。著書『メタバースとWeb3』(エムディエヌコーポレーション)では「DAOはモチベーションの革命」と言っているが、その真意とは。また、DAOがもたらす本質的な価値はどこにあるのだろうか。國光氏のDAO論をお届けする。

DAOは報酬、インセンティブの民主化

──國光さんが考えるDAOとは何か。教えていただけないでしょうか?

國光:DAOはよく「意思決定の分散化」と言われることがあるのですが、この認識は間違っています。例えば、DAOの成功例として知られるビットコインに関しても初期はサトシ・ナカモトが1人でコードを書くという完全独裁体制から、十数年かけて分散化していった。

イーサリアムもそうです。初期は創設者のヴィタリック・ブテリンが意思決定していたのですが、時間とともに少しずつ分散化していったんです。意思決定のところは結局、コミュニティのフェーズごとに適正な意思決定をすればいいだけなので、分散型の意思決定とDAOは一切関係がありません。DAOの重要なポイントは報酬、インセンティブの民主化です。

第1回の記事でWeb3の1つの側面として、「世の中はこうあるべき」という社会運動的な思想があるという話をしましたが、みんなが求めている本来あるべき世の中は「貢献に応じて報酬がフェアに分配される」というものです。これはWeb2時代の報酬が過度に資本家に偏ってしまっていたことへの反発ではないでしょうか。

──報酬が過度に資本家に偏ってしまっていたとは?

國光:YouTubeを例にしましょう。「動画革命」「動画の民主化」というビジョンを掲げるYouTubeが20兆円の企業価値をつけたとします。現状、この生み出された20兆円はYouTubeを立ち上げた起業家、投資したVC(ベンチャーキャピタル)、買収したGoogle、一部の資本家に配分されるわけです。ただ、YouTubeの成功を考えたときに、もちろん前述した彼らも貢献したと思いますが、初期のサービスが全く流行っていない頃から動画を投稿し続けた名もなきクリエイター、動画を見つけたファンの人、YouTubeのことを友達に知らせた人、記事にした人など、いろんな人がYouTubeの成功に貢献しているはずですが、彼らはそれに相応しい報酬を受けているでしょうか。それどころか、1円も報酬がないという人もいる。これっておかしくないか、ということです。

もしWeb3時代におけるYouTubeがあったとすれば、おそらくYouTubeトークンというものが存在していて、動画を投稿したり、友達に知らせたりしたらYouTubeトークンをもらえるという仕組みになっているはずです。YouTubeが掲げるビジョンの実現に向けて、みんなで頑張った結果、大成功したときには関わった人みんながハッピーになれる。こういう仕組みがDAOであり、今後の社会において求められているんだと思います。

DAOはよく「新しい時代の組織の形」とも言われますが、DAOを運営していく上で重要な要素は3つあると考えています。

──3つの要素について教えてください。

國光:1つは明確なビジョン、もう1つはビジョンに共感してできたコミュニティ、そして最後はコミュニティが発行する独自トークンです。

例えば、イーサリアムのビジョンは非常にシンプルで、ビットコインが出てきたときに、当時19歳だったヴィタリックが、「ブロックチェーンというテクノロジーを使えば通貨以外のありとあらゆる目的に使える分散型アプリケーションが作れるプラットフォームが開発できるのではないか」と考えたんです。そのビジョンに共感して、最初に7人のメンバーが集まり、コード書く人はコード書く、金出す人は金を出す、マイニングする人はマイニングする、アプリ作る人はアプリ、宣伝する人は宣伝するといったように役割分担し、みんながビジョンの実現に向けて頑張った結果、最初は7人で始まったプロジェクトが100万人、1000万人、今では2億人規模になった。そして、イーサリアムの時価総額も20兆円超になりました(2023年1月10時点)。

そして、この20兆円超のうち、創設者のヴィタリックは0.5%しか保有していないといわれており、それ以外は初期からイーサリアムのビジョンを信じて、貢献した人たちに少しずつ分配されている。これがDAOの本質的な価値です。Web2では、基本的に報酬が過度に資本化に偏っていたところを、DAOでは貢献に応じて報酬を細かく分配していく。これが重要なポイントです。

──なるほど、DAOの貢献に応じて報酬を分配する考え方が良くわかりました。

國光:これをスタートアップ的な例え方をするならば、ファンや顧客、ユーザーにもトークンという形でストックオプションを配っているとも言えると思うんです。スタートアップが既存の会社よりも競争優位性を持っている部分はストックオプションだと思っています。ストックオプションがあることで、頑張って会社が上場するなど大成功したら、自分にも金銭的なインセンティブがある。だから死に物狂いで頑張るわけです。

ただ、今までのWeb2ではストックオプションの付与対象は従業員まで。これを顧客やユーザーにまで広げていこうというのが、Web3、DAOの考え方の大きな部分だと思います。

──DAOで実現されるのはどのような世の中なのでしょうか?

國光:クリエイターエコノミー時代のプラットフォームとして、これまでにもYouTubeやInstagram、TikTokなどがありましたが、これらは基本的に応援したファンにメリットがないんですよね。ただ、応援したファンにもメリットがある形が作れるようになってくると、クリエイターエコノミーはより加速していくんじゃないかなと思います。それを実現するためのキーワードとして重要になってくるのがDAOだと思っています。

DAOの本質的な価値は、圧倒的にビジョンドリブンで、ビジョンが実現できたときには、自分の貢献に応じた報酬がもらえる、というみんながWin-Winなところにある。そういう意味では、Web3が、今までと大きく違うのはWeb2のような生産性とか効率性ではなく、あるべき世の中というものを追求しているのが多分にあると思います。

“思想”と“空気感”は科学を超える、DAOがもたらした面白い現象

photo / Shunichi Oda

──DAOというコミュニティの中で、価値を総取りしてしまうような悪意を持った人にブレーキをかけるような仕組みはあるのでしょうか?

國光:例えば、イーサリアムで言えば何でヴィタリックは0.5%しか保有していないんだ、という話になるじゃないすか。ちなみにイーロン・マスクはSpaceXの40%、テスラの25%を保有しています。この差は何なのか。DAOは既存の会社との仕組み自体が違っているんです。株式会社の場合、僕が会社を立ち上げたとすると、100%のオーナーシップで資金調達のたびに、大体10〜20%の株式をVCに売り渡します。上場するまでに大体5〜6回の資金調達を実施し、上場したときの仕上がりの平均値で言えば、オーナーが20〜30%、コアメンバーが10%、残りの60〜70%をVCが保有する。これがスタートで、上場した後にいろんな個人投資家が入ってくる、というのが一般的な会社の形です。

しかし、DAOの場合はチームメンバーが15%で、投資家が10〜20%、コミュニティが50%なんですよね。このチームメンバーの15%の配分というのも、なぜ15%になっているかのがよくわからない(笑)。思想や空気感といった要素が強いと思います。

最初の頃の記憶では、数年前までチーム保有分は40%くらいあったと思います。でも、コミュニティ内に「あいつら40%も保有しようとしている。Web2だ」みたいな感じの空気感が醸成されていき、次第に15%くらいになっていった。

──空気感で人が動いているというのは不思議ですね。

國光:そうですね。この平等に分けなきゃいけない空気感というのが、今回の面白いところで。思想と空気感は科学を超えるんだな、と。例えば、脱炭素に関しても科学的根拠に基づいた話を聞いたことがある人はすくないと思います。多くの人は、このまま進んでいけば環境が駄目になるのは何となくわかっているけど、どのくらいのCO2を出し続けたら、どのくらいの期間で、どういうふうに駄目になるのかまでは知らない。コンビニのレジ袋にしても、有料化にしたことでどれだけ環境に対する影響を減らせているかどうかは誰も知らないと思います。

Web3が社会運動というのは、効率性や合理性、科学性を超えたところでのあるべき姿を追い求めていく。あるべき世の中を目指す空気感になってきているのかなと感じます。

──Web1時代のおじさん世代だけでなく、Z世代などの若者もそうした空気感を求めるようになったのはなぜだと思いますか。

國光:若い世代であればあるほど、産業革命から続いてきた大きな物語を信用できなくなっているんだと思います。もともとは「物質的に豊かになる=経済的に豊かになる=人生が豊かになる」という方程式があったと思うんです。

ただ、今の若い世代は物質的に豊かになることと、人生が豊かになることがイコールではないと考える人が多い。物質的な豊かさと自分の人生の豊かさがイコールとは思えなくなってきている中で、インターネットでより人々が自由になる、それによってみんなが幸せになるという価値観のWeb3が出てきた。若者の価値観、時代性と今回のWeb3ムーブメントが完全にマッチしてきたというのが大きかったのではないかと思っています。

共感されるビジョンには「強い思い」が反映されている

photo / Shunichi Oda

──國光さんは著書の中で「DAOはモチベーションの革命だ」と言っていました。物質を信じなくなったという価値観を踏まえると、モチベーション革命は結局のところお金なのではないかと思ったのですが、その点についてはいかがですか。

國光:どうせ何かするのであれば、やりがいのあることをやってお金を稼ぎたい。今までは嫌なことをやって生きていくためのお金を稼いでいたと思うのですが、共感できるビジョンに協力してお金が稼げるのであれば、そっちの方が絶対に良い。そういう意味でのインセンティブ革命かなと思っていて。今までは食うため、生活するために嫌なことでも仕方なくやってきたところに今回のWeb3、DAOというのが出てきた。いろんなプロジェクトがビジョンを掲げ、そのビジョンに賛同したところを応援することで、結果として報酬も入ってくる、そういう世の中になった方が絶対良いと思うんです。

そういう意味では、DAOは産業革命の行き切った部分を是正している面もあるし、逆に言うと今までの資本主義では届いてなかったところに資本主義を入れているとも言える。

例えば、NPOと株式会社では圧倒的に株式会社の方が規模が大きい。それはNPOは応援したい「ファンしか支援しない」から。一方で、株式会社は「儲かる可能性がある」と期待して投資家が投資するため、規模も大きくなっていくわけです。

この「ファンしか支援しない」という部分に、うまくDAOの仕組みを持ち込んできて、「ファン以外の人でも買う」みたいな形ができてくると、今までの資本主義では行き届いてなくて、日の目を見なかったものも一気に大きくなっていく可能性があると思っています。

──成功するビジョン、共感されるビジョンに必要な要素は何だと思いますか?

國光:これは結構シンプルだと思っています。僕がリーダーだったとすると、やっぱり僕がそのビジョンを信じられていないと結局、周りの人にもバレてしまう。そういった意味では、自分ごとにできる課題は誰にでも何かしらあると思うので、「これを解決したい」という強い思いをビジョンに反映することが重要になると思います。

──DAOに向けたストーリーの作り方で何かポイントはあるのでしょうか?

國光:人の心に伝わるストーリーに必要な要素というのは今までとそんなに変わらないと思います。その一方で、ストーリー自体に自分が本当に解決したい課題が混じっていることが大事になる。テクニックはきちんと今まで通りのものを使いつつ、さらに自分ごと感を加えてく。この2つを組み合わせることで、DAO時代にみんなの共感を生むようなストーリーが出来上がっていくのではないか、と思っています。

例えば、フィナンシェで提供しているブロックチェーンを利用したトークン発行型クラウドファンディングサービス「FiNANCiE」には、「SUPER SAPIENSS(スーパーサピエンス)」というプロジェクトがあります。これは、日本のエンタメ・映画界を牽引してきた3人の映像監督『堤幸彦・本広克行・佐藤祐市』が共同で制作指揮をとり、サポーターと一丸となって日本の映像業界史上初となる、原作づくりから映像化に至る全プロセスの一気通貫に挑むプロジェクトです。日本発で世界で大ヒットするようなIPを作り出したい、日本エンタメ業界の逆襲というビジョンを掲げ、そこに共感する人たちが集まってくれています。こういう、自分ごと化しやすく、共感しやすいビジョンをつくっていくのが重要かなと思います。

古き良き牧歌的なインターネットの良さも取り入れつつ、そこに新しいテクノロジーならではの価値を乗っけていく。これがWeb3の本質なのかなと思います。

第1回はこちら)

【國光 宏尚のプロフィール】

株式会社フィナンシェ 代表取締役 ファウンダー
株式会社Thirdverse 代表取締役 ファウンダー
gumi cryptos capital Managing Partner
gumi ファウンダー
1974年生まれ。米国 Santa Monica College 卒業。2004年5月 株式会社アットムービーに入社。同年に取締役に就任し、映画・テレビドラマの プロデュース及び新規事業の立ち上げを担当。2007年6月 株式会社gumi を設立し、代表取締役社長に就任。2021年7月に同社を退任。2021年8月より株式会社Thirdverse 代表取締役CEOおよび 株式会社フィナンシェ代表取締役CEOに就任。

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