2023.1.19

【國光宏尚】Web3がもたらす「イノベーション」と「社会運動」

StoryNews編集部

國光宏尚

株式会社フィナンシェ 代表取締役 ファウンダー

株式会社Thirdverse 代表取締役 ファウンダー

國光 宏尚

2022年、バズワード化するほど大きな盛り上がりを見せた「Web3」という概念。Web3とは、ブロックチェーン技術を基盤とした新しいインターネットのかたちのこと。このWeb3の概念にいち早く着目し、2017年からブロックチェーンを活用し、VRゲーム上に新たな経済圏を加える計画「Thirdverse構想(旧:オアシス構想)」を提唱しているのが、Thirdverse代表取締役CEOの國光宏尚氏だ。國光氏は今年、著書『メタバースとWeb3』(エムディエヌコーポレーション)を出版している。

Web2と比較した際のWeb3の特徴、そしてWeb3によるインターネット革命の本質はどこにあるのか。國光氏が語った内容を2回シリーズでお届けする。

10年単位で起きる、テクノロジーのパラダイムシフト

photo / Shunichi Oda

──國光さんはブロックチェーンを活用し、VRゲーム上に新たな経済圏を加える計画「Thirdverse構想(旧:オアシス構想)」を2017年に提唱されました。

國光:僕は新しいテクノロジーが生み出す、世の中のパラダイムシフトは10年単位で起きるものだと考えています。前回のパラダイムシフトは2007年。この年は非常にユニークでAppleがiPhoneを発表し、Twitterがサービスを開始し、そしてAmazon Web Services(AWS)が登場した。

結論から言ってしまえば、この10年はスマホ、ソーシャル、クラウドの時代だったわけです。その起点となるものが偶然にも、ほぼ同じタイミングで登場した。その結果、Web2時代の王”とも言えるようなGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)が急成長し、2021年8月には4社の時価総額は合計で770兆円規模にまで成長し、日本のすべての上場企業の時価総額を大幅に越すほどになりました。

その一方で、この4社が昔から大きい会社だったのかと言えば全然そんなことはありません。時代を2000年まで戻すと、当時のNTTドコモの時価総額は約42兆円で、GAFAの時価総額を合わせた金額よりも、ドコモ1社の時価総額の方が大きかった。そして、2007年でもドコモの時価総額はGAFAに拮抗していたんです。そこから、この10年でスマートフォン、ソーシャル、クラウドという大きな波に乗っかって一気にGAFAが急成長し、この4社で日本のすべての上場企業の時価総額を上回る規模になったというわけです。

GAFAが急成長を遂げた一方で、ドコモが落ちたのかと言えばそういうわけではなく、ずっと横ばいの状態が続いている。ただ、それはアメリカも同じです。S&P500を見ていても、古い伝統的な会社は一切成長していません。

では、アメリカと日本の差は何だったかと言うと、トヨタやホンダ、パナソニック、ソニーなどが頑張らなかったわけではなく、GAFAのような会社をひとつも生み出せなかった。そこが決定的な差になっていると思っています。Web2時代に覇権をとったアメリカや中国が急成長を遂げ、そうでなかった日本はずっと横ばいが続いている、ということです。

ただ、このスマホ、ソーシャル、クラウドというWeb2時代の大きな波も、いよいよ限界が見えてきていて。成熟期を迎え始めている。それこそ、直近の決算発表を見れば分かりますけど、GAFA+マイクロソフトという、いわゆる“ビッグ5”と言われる巨大IT企業の成長率は10%を切ってきています。日本も同じで、Web2時代に代表されるようなLINEやメルカリといった企業も成長は止まってきました。この10年でスマホ、ソーシャル、クラウドは伸びきってしまい、成長の余地がなくなってしまった。

そのタイミングで、もう一度新しいテクノロジーによって、パラダイムシフトが生まれるはずだ、と。スマホ、ソーシャル、クラウドというWeb2時代を代表するテクノロジーに変わり、次の時代はメタバース、Web3、AIが中心になると考えたんです。

──メタバース、Web3、AIによって新たなパラダイムシフトが起きる、と。

photo / Shunichi Oda

國光:そうです。テクノロジー業界で重要な要素は基本的にデバイス、データ、データの活用という3つだと思っています。この3つが変化することでパラダイムシフトが起きている。

例えば、スマホ、ソーシャル、クラウドがWeb2時代だったとすると、Web1時代のデバイスはパソコンだった。それがスマホに変わったことで、Web2時代になったわけです。それと同じように、今度はデバイスがスマホからVR・ARになる。目とインターネットが直接繋がって空間すべてがディスプレイになる時代になっていくはずだろう、と。

10年後に社会がどうなっているかを想像したときに、スマホの画面を覗き込み続けている人の姿が全然イメージできなかったんです。どう考えてもスマホの画面を見るよりも、空間すべてがディスプレイになっている方が便利。そうした考えもあって、近い将来に間違いなくVR・ARが普及するという確信があり、初期の頃から投資し続けています。

よく、起業家は世の中にないものをゼロから発明する人というイメージを持たれることが多いのですが、それは間違っていて、起業家で最も大事なのは5年後、10年後の日常を想像する力です。例えば、スマホも発売当初は「こんなに小さいデバイスで誰がインターネットをするんだ」と言われていたわけですが、ジョブズは「家に帰ってパソコンの前に座ってインターネットをするよりも、どこからでもインターネットにアクセスできた方が便利。そういう世の中になっていく」と考えていたと思います。結果的に、世の中はスマホが当たり前の社会になっている。それと同じで、目とインターネットが直接繋がって空間すべてがディスプレイになった方が直感的にインターネットを使えるし、圧倒的に便利だと思うんです。であれば、その未来は確実にやってくるだろうな、と。

──2007年は國光さんがgumiを立ち上げた年でもあります。

國光:gumiはスマートフォンの波に乗っかったという意味で、“Web2時代の申し子”的な会社だったと思います。他ではLINEやメルカリがそうです。共通しているのは、今までパソコン上でしか体験できなかったものをスマホに置き換えた、ということです。

結局のところ、Web2時代に勝者となったのはスマホならではのUI/UXを発明した企業。ヤフオクがある中、メルカリが勝者となったのはスマホならではのUI/UXをつくり出したからです。LINEやパズドラなどもそう。新しいテクノロジーでなければできないことを発明したところが最終的には覇権を握る。Web3時代も基本的には考え方は同じで、いかにWeb3ならではの体験をつくり出せるかどうかが重要になってくると思います。

Web3革命の本質は「インターネットの理想」を取り戻す社会運動

──先ほどから「Web3」という言葉が何度か出てきていますが、改めて國光さんが考えるWeb3の定義について教えていただけないでしょうか?

國光:Web3には2つの要素があると思っています。この2つの要素が混在化してしまっているために、Web3の定義が複雑になってしまっているのだと思います。

Web3を構成する要素というのは、ブロックチェーンという分散型テクノロジーがもたらしたイノベーションと、社会運動的な思想の2つです。なぜこの2つが混在化してしまうかと言えば、テクノロジーには進化の時間軸がある一方で、思想には時間軸がないからです。この2つを同列で考えてしまうために、Web3の定義が曖昧になってしまう。

──Web3のイノベーションとは、どういったものでしょうか。

國光:これは『メタバースとWeb3』という書籍にも書きましたが、ブロックチェーンによるイノベーションは大きく3つあり、1つめがトラストレス(信用不要)、2つめがNFT(非代替性トークン)、3つめがDAO(分散型自律組織)です。

Web3のイノベーションに関しては、いろんなところで語られているので割愛しますが、Web3を語る上で面白い部分は社会運動的な思想の側面です。今までのWeb2時代は社会運動的な思想の側面は何一つなかった。言ってしまえば、テクノロジーによってとにかく生産性・効率性を追い求めていくということだけでした。

ただ、今回のWeb3は違う。Web3は、「理想としていた僕たちのインターネットを取り戻す」という社会運動なんです。Web3に興奮しているのは、世界中を見てもZ世代の若者、もしくはWeb1時代を知っているおじさん世代。

日本で言えば、元MITメディアラボ所長の伊藤穰一さんや連続起業家・投資家の孫泰蔵さんです。またアメリカで一番有名なのは、Web3業界で最も有名な数千億円規模の投資ファンド「a16z」を運営するマーク・アンドリーセン。彼はもともと、Web1時代にウェブブラウザ「Netscape Navigator」を運営するNetscapeを立ち上げた人です。このNetscapeがインターネット企業として初めて上場したことで、第1次インターネットバブルが始まったわけですが、当時のインターネットのテーマは「人々の手に自由を、権利を」というように、“Power to the People”みたいなノリがあったんです。

そこから十数年経ち、気がついたら“ビッグ5”と言われる巨大なIT企業が生まれていて、ユーザーのアイデンティティやデータ、富も全てを集中させる構図になっていた。そこでWeb1世代の人たちが気づいたわけです。「彼らにここまでの力を与えて良かったのか」と。

例えば、朝起きたらメールアカウントがない、LINEやPayPayなどが使えないとなったら「生活できないかもしれない」と思ってしまうわけですが、“ビッグ5”はそれが簡単にできてしまう。象徴的だったのが、Twitterによるトランプ前大統領のアカウント凍結です。

当時、大統領だったトランプ氏のTwitterアカウントをTwitter1社の規約によって凍結した。法律に基づかず、いち企業の判断でそこまでして良かったのか、そこまでの力を与えて良かったのか、と多くの人が考える出来事になったんです。

photo / Shunichi Oda

インターネットはもともと「人々を自由に、人々の手に力を」というテーマでやってきたはずなのに気がつけば、ごく一部のプラットフォーマーがすべてを支配するようになってしまった。ここから人々を解放する必要があるのではないか、という思想をもとに社会運動のようなムーブメントが起きているのが今回の大きなポイントかなと思います。

面白いのは、1984年にAppleは初代Macintoshを“人々をより自由にするための武器”と捉え、当時の社会への反骨的メッセージを込めたテレビCM「1984」をスーパーボウルで放映し、大きな話題を集めたわけですが、30年経って、ビッグ・ブラザーの位置に君臨しているのがAppleという点です。力を追い求めるがためにダークサイドに落ちてしまった。そこに対して、今Decentralize(ディセントラライズ)を合言葉に戦いを仕掛けにいっている。

Web3で求められる社会の“空気感”

──Web3ではどのような社会が理想とされるのでしょうか?

國光:Web3の動きというのは最近のSDGsや脱炭素に近しいものがあると思っています。科学とかではなく、空気感。SDGsじゃなきゃ駄目、脱炭素じゃなきゃ駄目という空気感が強くて、「世の中はこうあるべきだ」という理想を追い求める動きが、ここ数年で起きているのではないかと感じています。

Web2は生産性と効率性しか追い求めず、社会を変えるところまでは出来ていない。それに対して、より個人を自由にするという思想がWeb2のアンチカルチャーとして求められている。この分散型という領域での戦いというのが、まさにそのビッグ・ブラザー的な立ち位置の巨大IT企業だし、さらに広義で言えば国家になってくる。

例えば、あれだけWeb2時代でテクノロジーを推進しまくっていた中国政府がWeb3を完全に禁止しているのは、ブロックチェーンなどのテクノロジーが個人を自由にするための武器だと思っているからです。中国政府としては、極めて都合が悪いわけです。

こうしたトラストレスで自律的に動くDecentralizeなネットワークによって、分散型のインターネットを実現し、既存の巨大プラットフォームからの支配を打倒するという取り組みが、Web3における社会運動的な動きです。

ただし、分散型インターネットの実現というのは今後10〜20年かけて進めていく話なので、当面は変わっていかない。そうした中で、今後3〜5年の間で急速に普及してくるWeb3時代のイノベーションがNFTとDAOだと思っています。

第2回では、特にDAOについて詳しく説明していこうと思います。

第2回に続く)

【國光 宏尚のプロフィール】

gumi ファウンダー
株式会社フィナンシェ 代表取締役CEO/ファウンダー
株式会社Thirdverse 代表取締役CEO / ファウンダー
gumi cryptos capital Managing Partner
1974年生まれ。米国 Santa Monica College 卒業。2004年5月 株式会社アットムービーに入社。同年に取締役に就任し、映画・テレビドラマの プロデュース及び新規事業の立ち上げを担当。2007年6月 株式会社gumi を設立し、代表取締役社長に就任。2021年7月に同社を退任。2021年8月より株式会社Thirdverse 代表取締役CEOおよび 株式会社フィナンシェ代表取締役CEOに就任。

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