2021.12.10

【ミルボン経営戦略部部長・坂下秀憲】想定上回る登録会員増。BtoBのミルボンが美容室のために生み出した「BtoBtoC型」ECサイトとは 

StoryNews編集部

ミルボン 坂下秀憲

「エルジューダ」、「オージュア」、「オルディーブ」、「ヴィラロドラ」。美容室で見かけるこれらのトリートメントやヘアカラーは、株式会社ミルボン(東京都中央区:佐藤龍二代表取締役社長)が手がけている商品です。 

ミルボンは美容室向けのヘア化粧品メーカー。いわゆるBtoB事業で収益を上げています。2020年6月からスタートさせたのがECサイト「milbon:iD」。一見するとBtoC事業に乗り出した形に見えます。しかしながらその実態は、美容室を本気で考えた独自の「BtoBtoC型」マーケテイングでした。 

2021年11月時点で「milbon:iD」の登録会員数は15万人を突破しています。これは「2021年末に登録会員数6万人」という予定値をはるかに上回るスピード。「サロンを業界ではなく“産業”にしていきたい」。ミルボンが描く美容室の未来について、経営戦略部の坂下秀憲部長に話を伺いました。 

美容室を豊かにするメーカーとして 

ミルボンの歴史 

美容商材の問屋を営んでいた先代社長は、あかぎれた手で働く美容師を目の当たりにし「美容室、美容師を幸せにしたい」という思いから、1960年にミルボンを創業します。 

以後、美容室の繁栄を第一とする姿勢は変わらず、あくまで美容室専売のヘア化粧品メーカーとして事業を展開。美容師の技術を支えるトリートメントやヘアカラーといった商品は2,000を超えており、2020年には事業戦略の独自性を評価する「ポーター賞」も受賞しました。 

横ばいのマーケットサイズ 

化粧品市場は、スーパーやドラッグストアで商品を販売するBtoC(小売)と、サロンに向けたBtoB(プロフェッショナル)に2つ分かれています。富士経済研究所の「業務用化粧品市場の戦略分析2020」によると、プロフェッショナルにおける国内市場は約1,783億円。ほぼ横ばいで推移している業界と言えます。 

「全国には20万軒以上の美容室がある。いかにデジタル化が進んだとしても人間の髪は伸びるものであり、美容室は必要なサービス。マーケットサイズが大きく変動することはないが、単価を上げていくことが課題にあった」(坂下部長) 

化粧品メーカーとして美容室に商品を販売するだけに留まらないのが、同社の大きな特徴。業界全体の課題を見つけ、政策的な働きかけで市場を改善に導く役割も果たします。 

「milbon:iD」の仕組み 

サロンが抱える物販の課題 

美容師のスキルや人間力を向上させても、単価を上げることは難しいでしょう。そのような業界の中で広まったのが、トリートメントやヘアカラーです。髪を切る以上のサービスを提供し、付随する商品を販売することで単価の課題は改善されたかに見えました。ところが、美容室の商品売上は一向に伸びていなかったのです。 

「月間商品購入客を月間来店客で割ると、美容室店頭で販売している商品の購入客比率が算出できる。それが何年も変わっていなかった。つまり、美容室で商品を購入する客は増えていないということ。問題は、自宅でトリートメントなどが無くなったタイミングと美容室に行くタイミングにズレが生じていたから」(坂下部長) 

美容室専売品をどう売るか 

確かに、芸能人でもない限り毎月のように美容室に足を運ぶことはないでしょう。一方、美容室で購入したトリートメントは毎日使います。無くなれば、わざわざ美容室に行くのではなく、近くのドラッグストアで代替え品を購入します。 

この消費サイクルに気付いたミルボンは、2018年から「milbon:iD」の構想を練ります。障壁は「ECサイトでどう売るか」。ミルボンの商品は美容室専売品であり、対面カウンセリング販売が必須です。 

「対面カウンセリングの定義は、“問診”、“視診”、“触診”によって、消費者に適切な商品選択の情報をアドバイスする事。販売方法として、対面カウンセリングがされていれば、消費者にとっての購入方法はオンラインでも良いと考えた」(坂下部長) 

顧客は美容室へ行った際、対面カウンセリングを受けます。そこで、美容室が適切な商品を提案。美容室から付与されたIDで「milbon:iD」に登録すれば、顧客はECサイトで商品を購入することが可能に。顧客がECサイトから注文した商品はミルボンが直送します。これが、美容室専売品を顧客へ届けるBtoBtoC型ECサイト「milbon:iD」の仕組みです。 

登録美容室店舗数は約3,000店、登録会員数は15.2万人(いずれも2021年11月時点)。瞬く間に、顧客の利便性と美容室の生産性の双方を向上させるプラットフォームとなりました。 

美容師育成にも尽力 

新たなサロンDX「デジタルアリーナ」 

美容室は人が人に提供するサービス。当然、美容師育成にも力を入れています。その一つが「エデュケーションiD」。その名の通り、美容師の学びのためのプラットフォームです。Webテストやリアルセミナーなどを配信することで、登録した美容師に学習の場を提供します。 

2021年6月には「ミルボンデジタルアリーナ」をローンチ。美容師がヘアデザイン技術を学ぶ場として誕生した、バーチャルイベントスペースです。自身でアバターをコントロールし、エントランスやイベントスペースといったエリアで多彩なコンテンツが体験可能。ボイスチャットなどを使ったコミュニケーションを取ることも可能です。 

“リアルサービス”のポテンシャル 

同社が手がけるDXのベクトルは全て「美容室のため」です。創業当初のビジョンが脈々と受け継がれています。 

「美容師が生涯に渡って働ける顧客づくりが私たちの使命。そして、私たちが美容室にこだわる理由はもう一つ。美容室は“リアルサービス”だから」(坂下部長) 

デジタル社会において、人と人が直接コンタクトできる業種は減っています。しかし、美容室は定期的に人と人がコンタクトするリアルなサービスです。また「顧客担当制」であり「滞在時間が長い」というのも大きなポテンシャル。じっくり顧客と向き合うことが当たり前の空間なのです。 

各地域に必ずある身近な存在が美容室。「地域交流のハブに、業界ではなく産業に」。ミルボンが見据える美容室の未来を期待せずにはいられません。 

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