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2021.8.11

【深野 崇 OPSION】暗闇を抜けて見た仮想空間の光 クラウドオフィス『RISA』誕生物語

STORY INTERVIEW

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STORY NEWS編集部

深野崇 OPSION

株式会社OPSION 代表取締役 深野 崇

課題解決キーワード:“The darkest hour is just before the dawn.”「夜明け前が一番暗い」

テレワーク普及とともに各メディアから注目を集めているクラウドオフィス『RISA』。3Dバーチャルの世界を働く場とする仮想オフィスのサービスだ。自身のアバターを作成し、RISA内で社員同士がコミュニケーションを図る。各スタッフのタスク状況が把握できるほか、Web会議やチャット、グループ機能などが搭載されている。

従来の働き方とは一線を画すサービスを提供するのは、大阪にある株式会社OPSION。創業者で代表取締役を務める深野崇のこれまでのキャリアは、長い暗闇のなかで格闘するような経験の連続だった。

10代の暗闇、そして、もがき

両親の離婚と夜間高校中退

1992年、兵庫県で生まれた深野。幼少期は、秘密基地作りに熱中したり「自転車でどこまで行けるだろう?」と延々と走り続けるような探検好きだった。好奇心が強く、興味のあることには没頭するタイプの子どもだった。

最初の困難は中学時代。両親の離婚だ。母子家庭となり、住む家はボロアパート。周りの同級生を羨み、自身の環境に苛立った。

「中学時代は『嫌なことは一切しない』、『いかに楽に生きていくか』だけを考えていた。学校はほとんど行かず遊んでいた。レールから外れて社会に反発していた」(深野)

塾に行ける経済的余裕もなく残された選択肢は夜間高校だったが、それすら続かず中退。「なぜこんな目に遭っているのか」、「社会が悪いからだ」と感じた。一方で「反発することでは何も変わらない」ということも冷静に分かっていた。

携帯を解約し、交友関係を断つ

「自分の力で人生を変えようと思った。まずは大学進学。宣言したところで、周りからは馬鹿にされた」(深野)

中学、高校と勉強の習慣もなかった深野。友人らの嘲笑は当然だった。そこで深野がとった行動は、携帯電話の解約だった。3ヶ月間、家に籠って勉強する習慣を身につけた。友人と遊ぶこともやめた。アルバイトで貯めたお金で予備校にも通った。努力の甲斐あってなんとか大学に進学。ところが、自身が志望する大学は受からず、またも悔しさだけが残った。

「志望校に行けなかったことが悔しくて、大学では一番難しい資格を取得してやろうと考えた。当時から起業したいという思いもあり、役立つ資格と考え、公認会計士を目指した」(深野)

夜明け前の光を探して

安定した毎日に不安

そして、深野は大学在学中に公認会計士の現役合格を実現、監査法人トーマツに入社した。同世代と比べて、年収も高かった。社会的な地位は上がった気がしていた。しかし、心は冷めていた

「安定した暮らし。でも、毎日続く同じ生活が怖くなった。何年か後の自分が見えてしまい嫌になった」(深野)

最も暗い夜明け前

トーマツは辞めたが、何をするかは決めていなかった。しかし、社会に革命を起こすようなことがしたいという想いは持っていた。深野は起業を決断。大学時代の友人ら3人で2019 年に立ち上げたのが株式会社OPSIONだ。

いくつもの事業のアイディアを考えた。そしてスタートさせたのがテレワーク事業だった。当時、テレワークの普及率は低かったが、ロンドンオリンピックの開催年にテレワークが普及したというデータがあった。2020年の東京オリンピック・パラリンピックにチャンスを見越した決断だった。チャットツール、Web会議ツールに次ぐ第3のツールとして、クラウドオフィス『RISA』をリリースした。

しかし、当時先進的過ぎるサービスが仇となった。課題を切実に捉える企業は少なく、数社の導入に至ったのみだった。そのうちキャッシュがショートして会社は厳しい状況へと陥っていった。事業を撤退して1人になった。

「心身ともに本当に追い込まれた。寺で瞑想の修行までした」(深野)

仮想世界に見出した光

再挑戦に光が射す

「周りからRISAを再起させる誘いがあったが、しばらくの間、その気になれなかった」(深野)

しかし、2020年、風向きが変わる。新型コロナウイルス感染拡大による、テレワーク需要の増加だ。再び2020年7月にRISAのベータ版を提供開始した。すると約300社の応募があり、50社に導入。2020年10月26日には、クラウドワークスと資本業務提携を締結してクラウドワークス取締役兼CINOの成⽥修造がOPSIONの取締役に就任した。

バーチャルの世界でオフィス空間を創り、そこで社員同士がコミュニケーションを図りながらビジネスを展開するサービスがメディアで話題を呼んだ。メディアからの取材だけでなく、各企業からサービスへの反響が集まった。

「コロナ禍が続き、テレワークの無機質なコミュニケーションだけでなく、雑談やライトな相談の重要性が理解され始めた」(深野)

大手が注目するRISA

RISAに注目しているのはベンチャーやIT企業だけではない。大手からの問い合わせが多数集まっている。

テレワークという選択肢が当たり前の社会になりつつある。大手各社は出社率を下げるとともに、従業員の満足度を上げなければならない。

テレワークの課題は“直接会えない”ことだ。会社からは従業員同士がどのような状況にあるのか分からない。「しっかり働いているのか」、反対に従業員には「しっかり見てもらえているのか」という不安が残る。そういったコミュニケーションのハードルを解消したのがRISAなのだ。

課題のない世界を探して

ビジョンある選択肢を

スピルバーグ監督の『レディプレイヤー1』が深野の好きな映画だ。環境汚染、気候変動、政治の機能不全という課題だらけの現実世界で、人類は「オアシス」と呼ぶVR世界に入り浸るというストーリーに刺激された。

「起業する際に思い描いたのは“誰もが挑戦できる世界”の実現だった。それは制約のない世界。現実の課題を全く無くした仮想世界の創造は、自分の人生を賭けられるテーマだった」(深野)

「ビジョンある選択肢を」という理念から名付けられた社名のOPSION(オプション)。

仮想空間で働くという選択肢を提案する同社は、創業当初からフルリモートでビジネスを展開しており、現在のテレワーク普及の先を行っていた。

信頼関係構築の概念を変える

現在、OPSIONの社員数は10数名。出勤や勤務時間という概念はない。RISAに出社してアバターでコミュニケーションを図るため、深野はほとんどの社員の素顔を知らない。

現実の職場と圧倒的に違うのは、社員との信頼関係の築き方だろう。面接の時点からアバターだ。当然、人材を採用するために最低限の書類は提出してもらう。しかし、やり取りは主にRISAの仮想空間で行われる。OPSIONでは試用期間を1カ月ほど設け、RISA内における人柄や能力で合否を判断するという。

「抽象的なタスクを課して、それに対してどのようなアプローチで成果を出すか。そこを見ている。また、定例会を毎週行い、そこでゲームや自己紹介などをする。密にコミュニケーションを図って、信頼関係を構築している」(深野)

制約のない世界でパフォーマンスを最大化

「RISAで、一人ひとりのパフォーマンスを最大化させることができれば」(深野)

テレワークはスタンダードになりつつある。いっぽうで、未だに「決められた時間、場所で働くこと」から抜け出せない考え方も残っている。

時間や場所、タイミングを働き手が自由に選び、成果を出していくことの方が重要だとOPSIONは提案する。RISAというサービスはオフィスに出社している時と同様か、それ以上の空間を実現させているのだ。

「働くのに最適な環境や条件というのは、人によって違う。最適な環境がリアルの世界だけにあるのではない」(深野)

では、リアルの職場はどうなるか。深野は「リアルが担う役割や価値は変わってくるのではないか。例えばリアルは非日常を楽しむ贅沢な空間となる。RISAで働く社員同士が、リアルな社員合宿などで初めて出会うようなことが普通になるのでは」と語った。

探検好きな少年だった深野は、課題のない“もう一つの世界”を探し求める。

【深野 崇プロフィール】

夜間高校中退後、大学在学中公認会計士試験合格

大学卒業後は有限責任監査法人トーマツにて、主に上場会社の会計監査、内部統制監査に従事、兼務で複数社のベンチャー支援(資本政策指導、メンタリング、投資家マッチング等)を行う

2018年2月 京都大学技術イノベーション事業化コース最優秀賞受賞

2018年9月 トーマツ退社

2019年1月 株式会社OPSION創業

【深野 崇のSTORYを作った本】

『夜と霧』 著者:ヴィクトール・E・フランクル 翻訳:池田 香代子 出版社:みすず書房

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