2022.3.1

ワーケーションで企業成長 e-Janネットワークスの働き方

StoryNews編集部

坂本 史郎 e-Janネットワークス株式会社 代表取締役

e-Janネットワークス株式会社 代表取締役 坂本史郎

課題解決キーワード:「弾み車の概念」(ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則より)

働き方改革やDX推進、新型コロナウイルス感染拡大など様々な要因から、ビジネスパーソンの働き方が多様化している。なかでも、e-Janネットワークスの取り組みは非常にユニークだ。同社は、リモートアクセスサービス「CACHATTO(カチャット)」などを開発、展開している。

e-Janネットワークスはコロナ禍で2020年度においては前年比180%の事業成長を達成。テレワーク普及によるCACHATTOの売上急増も大きい。しかし、最大の要因は社員のワーク・エンゲージメントの向上だろう。「理想的な組織からは健全なビジネスが生まれる。企業と社員の結びつきを強める社内制度について、自社で仮説から実験、検証まで行っている」と坂本史郎代表取締役は語る。

留学で実感した日本と海外の違い

メリハリのある働き方

アメリカをはじめとする海外のビジネスパーソンは休みが多く、日本人は休みなく働くというのが一般的イメージではないだろうか。留学を経験した坂本が海外で目の当たりにしたのは、メリハリのある働き方だった。

「海外のビジネスパーソンも、16時間勤務といった長時間労働をこなすこともある。ただ休む時はしっかり休む。オン、オフの切り替えがはっきりしており、双方で充実した時間を過ごしている」(坂本)

労働時間外の時間の重要性

日本はというと、プライベートの時間と労働時間が切り離れていないケースもある。これは、ブルーカラーの労働形態をホワイトカラーにも当てはめてしまっていることに問題があるとされる。

「仕事ができる人というのは、労働時間外に仕事のアイディアを思い付くことが多い。一方、日本の現状の法律では、労働時間外に賃金は発生しない。これではモチベーションを保つことが難しい。労働時間外のカウントや評価の仕方を考えなければ」(坂本)

同社が採用したのは残業代先払い制度だ。月40時間分の残業代を先に支払い、社員のタスクを高めている。

テレワーク導入率100%

10万円のテレワーク手当て(テレワーク環境準備一時金)

コロナ禍によって、働きやすさを考える企業は増えている。テレワーク導入の検討もその一つだろう。e-Janネットワークスはテレワーク実施率100%を達成。業務内容にかかわらず全部署、全社員がテレワークを取り入れて働いている。また、一般社員、契約従業員、パートタイムを問わずテレワーク手当てを支給しているのも特長だ。

失敗に個人を巻き込まない仕組み

男女問わない育休制度も現代の働き方にマッチしている。同社では妊娠9カ月の社員もテレワークで業務を実践。また、2020年度の男性社員の育休取得率は8割。夫婦ともに多忙な時はベビーシッター制度が利用できる。

育休復帰率も100%を達成しており、まさに誰もが働きやすい環境づくりに邁進していると言えるだろう。

「社内のルールづくりは極めて重要。そして、働き方の制度を変えると当然、反対意見が出ることもある。一部の人に不利益が出ないようにしなければならない。その仕事が得意な人を探してその仕事を任せることが大事だ。万が一失敗した場合でも、個人が失敗に巻き込まれない仕組みをつくるべきだ」(坂本)

日本各地でワーケーション

バックオフィス業務もワーケーション

非日常的な空間で働くワーケーションが注目されている。同社も最大60営業日取得可能なワーケーション制度を導入している。他社との大きな違いは拠点があることだ。

大阪、高知には拠点を、函館にはサテライトオフィスを設け、働ける環境を整えた。高セキュリティのリモートアクセスサービスを展開する同社だからこそ、安心安全で快適なワーケーションが実現できている。1度のワーケーションに交通費補助は1回上限5万円、宿泊費補助は1回上限5泊まで、1泊一律5,000円が支給される。

「複数の地域でワーケーションをする社員が多い。年次休暇が減らず、会社からお金も出るということで、多くの社員に喜ばれる制度となった。特に出張に縁がないバックオフィス業務に従事する社員などもオフィスに縛られず、ワーケーションで働けるというのは大きいのではないか」(坂本)

高知オフィスの新たな試み

数年前に開所した高知テクニカルセンターは「コネクテッド高知ITコースト」として始動している。サービスの課題解決のためのテストセンターという役割も持たせている。また、高知の拠点に所属する社員は、100%地元採用。農業や大学講師といった本業と両立可能な副業を持つ人材を採用し、地域人材の開発にも尽力している。

高知工科大学と産学連携にも取り組んでいる。2021年度には地元学生とのテクノロジー交流の場にもなるよう新たな拠点「e-Janラボin Kochi」を開設した。銀行店舗跡地を活用し、元金庫室をVRルームに改装。約36㎡のVRルームでは高知工科大学との共同研究で、テレワーク時のコミュニケーション課題の解決を図る。 オフィススペースにはテントが張られるなど、坂本の趣味であるキャンプを生かしたディスプレイが施され、柔軟な発想と新しい働き方が具現化された拠点だ。

弾み車の概念

循環する組織づくりを

他にも、コロナ禍以前にはヨガやピラティスといった無料のフィットネスレッスンや、農家と連携したオーガニック野菜を半額で提供するオフィスマルシェを開催。社内の取り組みを見える化して一年に一度全社で褒め称え合う「e-Janアワード」はコロナ禍ではオンラインにて開催されている。充実した福利厚生や社内制度が、ワーク・エンゲージメント向上につながっている。

「例えばキャンプで使用する焚き火台。これは空気を循環させることで、長く燃やす仕組みだ。社内制度も同じで、循環させながら、社員が仕事に燃えて、モチベーション継続させることが大事」(坂本)

坂本は『ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則』に書かれた「弾み車の概念」に影響を受けた。大きな鉄の弾み車は重く、1人で回転させるのには多大な時間と労力を要する。そのうちに、徐々に協力者が現れる。1人ではほとんど動かなくても、数人いれば1分で1回転できる。もっと人が集まれば、1分で100回転も可能となる。これは事業でも同じことが言えるだろう。

「大事なのは全員が同じ方向に力を加えること。一方向を信じて回し続ければ、大きな力になる」(坂本) e-Janネットワークスは「働きがいのある会社」ランキングで2年連続ベストカンパニーに選出された。さらに2021年には第1回「TOKYOテレワークアワード」推進賞も受賞。これからも、弾み車は力強く回っていくだろう。

第1回はコチラ

【坂本史郎 プロフィール】

e-Janネットワークス株式会社 代表取締役

1986年早稲田大学 理工学部卒。東レ株式会社に入社後、バージニア大学 ダーデン校でMBAを取得し、2000年に株式会社いい・ジャンネット設立。現社名のe-Janネットワークス株式会社の前身となった。リモートデスクトップサービスなど、テレワーク導入のためのSaaSビジネスを展開し、主力商品「CACHATTO(カチャット)」は1,500社75万人のユーザーを誇る。真の理想的な働き方と組織としての理想形を追い求め、10年以上前から、毎朝全社員の日報へのコメント記入を日課にしている。コロナ禍において激減したコミュニケーションを増やすために、グループ雑談やワーケーション制度の導入等様々な施策を取り入れ、組織作りに欠かせない「会話・対話の生まれる場」づくりにも積極的に取組んでいる。

【坂本史郎のStoryを作った本】

『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』 著者:ジム・コリンズ 出版社:日経BP

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