2022.9.26

【ダイヤモンドブルーイング 鍛島勇作】熊本からクラフトビールで産業革命。酵母サイエンスを発展させた次世代ビジネスとは?

StoryNews編集部


株式会社ダイヤモンドブルーイング 代表取締役 鍛島勇作

2016年に創業した株式会社ダイヤモンドブルーイングは、従業員数14人の若く小さな企業。ビールの製造、卸、販売と飲食事業を主な事業として展開していますが、このほど大きな事業変革のターニングポイントに来ています。同社が目論むのは、ビールとテクノロジーを融合させた「ビールテック事業」です。

熊本で唯一となるビール工場併設型マイクロブルワリーを設立し、2018年に醸造開始、オリジナル酵母の開発にも着手。そこから見出したのは「ビール造りだけでなく、医療や環境などに至るまで、産業の枠に囚われない社会貢献」でした。地元、熊本から世界に発信する次世代ビジネスについて、同社の代表取締役を務める鍛島勇作氏に話を伺いました。

クラフトビールからビールテックへ

株式会社ダイヤモンドブルーイング 鍛島勇作

-まずは、ダイヤモンドブルーイング設立の経緯を教えてください。

鍛島:私はこれまで貿易関係の仕事に携わっていました。仕事で世界30カ国を渡り歩く中で、その国でしか味わえない多彩なクラフトビールに出会いました。クラフトビールは、大手メーカーなどが販売する一般的なビールと違い、その国の個性が現れるもの。この素晴らしさを地元、熊本で発信したいという思いを抱きました。2012年、熊本でビアホール「KAEN」を開業したのが始まりです。

-クラフトビールは日本でもトレンドの一つですよね。

鍛島:確かに近年、日本でもクラフトビールという言葉はよく耳にするようになりました。しかし、本来のクラフトビールとは「その土地で造られたビール」です。日本のクラフトビールはほとんどが海外からの輸入がベース。原料から日本で造られているものはごく僅かです。一方、ビール大国として知られるドイツやオランダ、ベルギーなどはクラフトビールにも歴史があり、研究も進んでいます。

-なるほど。正真正銘の日本製クラフトビールを熊本の地で造っているということですね。

鍛島:はい。熊本の阿蘇というエリアは地下水が美味しいことで有名です。水に恵まれているため、農業が盛ん。また、遠浅になっている有明海では多種多様な微生物が採取できます。ご存知の通り、ビール造りは酵母の採取がスタート。私たちは微生物のサンプル採取やスクリーニングから酵母の発見、選別、醸造、商品化までを熊本で行っています。このような、ビール造りとバイオサイエンスというテクノロジーを融合させた「ビールテック事業」をこれから加速させていきます。

産業革命の鍵となる酵母のライブラリー化

-御社が掲げるビールテックの具体的事業についてお教えください。

鍛島:まずは「産学官連携酵母採取」。地元の大学と連携し、200を超えるサンプルを採取しました。6株の酵母分離、10の酵母候補を選抜するなど、着々と研究は進んでいます。また、世界初となる分裂酵母によるビール醸造にもチャレンジ。2度の試験醸造を実施しました。2023年3月の完成を目指しています。

-微生物のサンプル採取からスタートとなると、クラフトビールが商品化されるまでに非常に多くの工程を費やさなければならないのではないでしょうか。

鍛島:その通りです。本来、サンプル採取から適切な保管、コロニー植え継ぎ、酵母発見、発酵試験、培養、試験醸造といったフローが発生します。私たちは、多種な酵母を採取し、それをライブラリー化する予定です。クラフトビール事業だけでなくカルチャー推進や海外へのナレッジ提供に活用したいと考えています。酵母の保管や分離方法、酵母採取といった知財を蓄積するサイエンスラボは2023年設立予定。2024年からライブラリーの作成をスタートさせる想定です。

-酵母採取からビール醸造までは早くても1年かかると聞きます。採取されたサンプルの中からビール酵母となるものもごく僅か。さらに醸造して市場に出せるかどうかも未知数です。どのように対処していくのでしょうか。

鍛島:酵母採取の迅速化を目指し、分析装置の開発に取り組んでいます。これはマイクロ流路を使った装置。サンプル採取からの工程を短縮し、すぐに試験醸造が可能となる仕組み。膨大な数のスクリーニングがスピーディーになります。これはまさに、産業革命と言えるでしょう。そして、ビール酵母として使えるものはそのままライブラリーへ行きますが、そうでないものはビックデータとして環境改善や医療研究に応用する予定です。

-どういうことでしょうか。

鍛島:私たちは応用微生物学の教授とともに、微生物の挙動などを研究しています。微生物の分解性能から、水質改善やプラスチック分解などに役立つ菌が発見できるかも知れません。また、がん細胞研究や試薬の研究開発、サプリメント開発などにも役立つでしょう。

-ビール造りのための酵母研究における副産物が、あらゆる産業の役に立つ社会貢献にもなるということですね。

鍛島:そうですね。私たちのクラフトビール造りは「Made “with” JAPAN」です。日本オリジナル酵母の開発に積極的に取り組み、産業の枠を超えて新時代のためのサスティナブルなコンテンツを創造し、社会に貢献するというビジョンがあります。

売上高10億と海外進出目指す

-では、今後の計画について教えてください。

鍛島:クラフトビールとバイオサイエンスの拡大に尽力します。クラフトビール事業は2024年度に缶ビールを製造する工場を新設予定。その後、生産能力を向上させ、弊社のクラフトビールを世界に発信していきます。

-バイオサイエンスの領域では、具体的な数値の目標があるのでしょうか。

鍛島:そうですね。2023年にサイエンスラボを設立させ、翌年から酵母ライブラリーをスタートさせます。この時点で熊本産ビール酵母は5種というのが目標。同時に熊本産酵母のクラフトビール販売を目指します。熊本産だけでなく日本由来の「Japanese Yeast」については2025年に10種、2026年に15種というのが目標です。

-御社のスキームは多角的なビジネス展開ができそうです。

鍛島:ビールテック事業は3本の柱があります。「クラフトビール事業」、「酵母サイエンス事業」、そして「アグリ・カルチャー事業」です。クラフトビールを知るとともに、料理とのペアリングや楽しみ方を体感する場所の提供。既存のレストラン事業のほか、地域に貢献できるイベント活動やホップ栽培支援といったアグリ推進活動まで多岐に渡るビジネスを展開します。今後は季節や天候、属性といったあらゆる販売データを解析してビール醸造に活用していくことも想定しています。

-ありがとうございます。最後に、御社はどのようなビジョンを描いていますか。

鍛島:今はまだ従業員14人の小さな会社です。それでも、着々とビールテック事業が進んでいます。2026年を目処に海外で本格展開することが目標。熊本産クラフトビール販売はもちろん、オリジナル酵母の分離と醸造受託がサービスの軸となります。レストラン事業、ラボ機能を有するマイクロブルワリーの需要、酵母サイエンスそれぞれを拡大させ、2026年には売上高10億円に推移するような企業に飛躍したいですね。

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