2022.12.14

【さわえみか】メタバースに“触る”“楽しむ”“ハマる”、そして“考える”

StoryNews編集部

さわえ みか 株式会社HIKKY

株式会社HIKKY  COO/CQO さわえ みか

課題解決キーワード:「メタバースで生きている」

企業とクリエイターをつなぎ、豊かなVR体験の普及に貢献する「オープンメタバース」を理念として掲げる株式会社HIKKY。世界最大のVRイベント「ーチャルマーケット」や世界100都市をメタバース化させる「パラリアルワールドプロジェクト」などを展開する企業だ。HIKKYの創業者の一人であり、経営者、アートディレクター、2児の母の顔を持つ、さわえみか氏に話を聞いた。

「好きなこと」を求めて突っ走る

-さわえさんは、大阪の出身とのことですが、子供時代、学生時代について教えてください。

さわえ:幼い頃から好きだったのは、絵を描くこととゲームをすること。特にドラゴンクエストシリーズは大好きで、鳥山明先生のキャラデザインに憧れていました。

クラスでは、広くみんなと話しながら、裏方として楽しいことを仕込むタイプでした。文化祭も好きでしたね。

-絵を仕事にしたいと考えていたのですか。

さわえ:そうですね。当時は絵を仕事にするのは難しく、諦めざるを得ませんでした。そこで「キャンパスの上に描くのも、顔に描くのも同じようなもの」という軽い気持ちでヘアメイクアーティストを目指すようになりました。

専門学校を卒業後は、大阪でブライダルや広告関係のヘアメイクの仕事に就きました。仕事は楽しかったのですが、やはりキラキラした世界も知りたいと思って、東京の有名なヘアメイクアーティストに履歴書を送り続けていました。

-突然の上京だったとか。

さわえ:はい。履歴書を送り続けていたヘアメイクアーティストから「明日から東京来れる?」と連絡が来て、泊まる場所も考えずに夜行バスに飛び乗りました。上京後は特殊なメイクの仕事や、テレビCMやMVの仕事にも関わりました。

そこから独立。CMの現場で知り合った人から絵の仕事を依頼されるようになります。絵は趣味程度に続けていたのですが、それでお金をもらうのは初めてのこと。広告の絵コンテを描く仕事でした。

-好きなことを追い続けた結果ですね。

さわえ:まさにそうです。2015年頃はソーシャルゲームの黎明期。ゲームキャラクターのビジュアルを描く仕事もありました。そうしてヘアメイクアーティストからイラストレーターに転身していきました。

-それから、イラストレーターとしての仕事は順調に増えていったのでしょうか。

さわえ:いえ、そんなことはありませんでした。いくら好きとはいえ、長くキャラデザインに携わってきたイラストレーターとは技術的な差がありました。

それを教えてくれたのが、現在HIKKYでCEOを務めている舟越靖さんです。「だったら、自分でゲームを創るしかない。自分が作ったゲームなら自分でキービジュアルでもキャラデザでもできるぞ。ゲームを世界観から創るアートディレクションという仕事でも絵の世界に携われる」。

徐々にアートディレクターという立場で、スマホゲームなどの制作をするようになりました。

-好きだった絵が、しっかりとつながっていますね。

さわえ:スマホゲーム制作ではアートディレクターという役割だけではなく、チームでプロモーションもやっていました。みんなで楽しいことを考えて、ようやく生まれたゲーム。それをどうやってユーザーに伝えていくか。

ゲームを知らない方をCMに起用することが、ゲームの楽しさを伝えることになるのか。もちろんマスに届けるのは必要。しかし…とそんな疑問を持っていた時に出会ったのがVRなんです。

VRと出会いHIKKYを立ち上げる

さわえさんがVRと出会ったことがHIKKYの立ち上げにも繋がっているんですよね。

さわえ:VRでキャラクターを動かしている動画を見たんです。そこから、ゲームのキャラクターがゲームの宣伝をやれば面白いんじゃないかと。

ゲームのキャラクターだけでなくプロデューサーたち、いわゆる“中の人”までを3Dモデル化して、現実で撮影したCMのパロディを制作。それがバズって波に乗った感じです。

VRをきっかけに、多くの出会いに恵まれて仲間が集まりました。そして「バーチャルであらゆる楽しいことを生み出していきたい」という想いが生まれ、株式会社HIKKYを立ち上げました。

HIKKYは“引きこもり”のヒッキーです。自分の部屋から出られないような人も、リアルの世界で仕事から逃れられない人も、デジタル空間では等しく活躍できるように。そんな願いが込められた社名です。

-メタバースのお仕事は、さわえさんにとって初めての経験だったかと。どのように学んでいったのでしょうか。

さわえ:まずは触ってみることから始めました。自分たちでVRを活用したCMを制作して、アバターを作って、メタバースを経験して。だからほとんど独学です。大切なのは「触ってみる」「やってみる」ということ。そして自分がハマる事を探していきます。

もう一つ大事なのは、ユーザーが何を求めているのか。自分がハマる事を探すと、その先には既にハマっている人たちがいます。そのユーザーたちと話して、「普段は何に触れているのか」「なぜこの企画を楽しんでいるのか」「私たちが企画していることは、面白がってもらえるか」を考えていく。独学でメタバースに飛び込み、そんなことを学びました。

リアル世界のパワーバランスが、バーチャルでは逆転

-メタバース空間を楽しむにはどうしたら良いのでしょうか。

さわえ:メタバースは次元が違う世界です。だから、コミュニケーションの次元も変えて良い。好きなアバターで好きなキャラクターになり切って遊ぶことが、メタバースを楽しむ秘訣です。

例えば、リアルの世界で容姿や外見が良くて、SNSのフォロワーが何万人いようと、バーチャルではそれを活かすのにスキルが必要です。そういう方よりアバターを使い慣れた一般の方のほうが、かわいく見えるということも多いです。

権威や肩書をリアルの世界に置いて別のアイデンティティで遊ぶ人こそ、メタバースで活躍している気がしますね。

-メタバースのお仕事で苦労したことはありますか?

さわえ:いざメタバースの仕事をしてみるといくつか課題がありました。バーチャルでしか生きられない人に、いかに活躍してもらうかよりも、逆にリアルの世界の考えのままの人たちにバーチャルの世界の振る舞い方をどう理解してもらうかのほうが難しかったです。

バーチャルをリモートで仕事をするのと同じだと捉える人がいて、どうやって別の世界だとわかってもらうかに苦労しました。

ですが、結果としては、メタバースで生きる人たちどうしが自然に解決していたんです。

-メタバースでほかに、どのようなことを経験したのでしょう。

さわえ:はじめは、バーチャル空間に集まってくる人たちと楽しいものをつくろうと活動を始めたのですが、様々な課題を解決する場面に出会うことがありました。

仕事で鬱になって動けなかった人が、バーチャル空間で物を創れるようになり、それが仕事になって稼げるようになったり。 バーチャルのイベントでバイトを募集したところ、リアルでは病院で寝たきりの人で、その人からバーチャルで活躍できたのが嬉しいと言ってもらえたりしました。

そんなこと、想定していなかったのです。私は、バーチャルで会ったその人たちが好きで、仲良くなって一緒に活動をしただけ。私は課題の解決をしたいと行動したわけではなかったのです。

-聞けば聞くほど奥の深いお仕事です。現在、HIKKYにおけるさわえさんの役割は何でしょうか。

さわえ:私たちの仕事はメタバースに経済圏を生んで、ビジネスや雇用を創っています。楽しいと思えることを考えて、考え抜いてそれをプロジェクトに落としていくことが私の役目。経営者の一人として、アートディレクターとしてユーザー目線で「どうやったら人が集まるか」「何が楽しいのか」を常に考えている人です。

-お仕事で大事にしている事を教えてください。

さわえ:バーチャル空間でアバターで会って仕事をしていると、権威や経験に関係なくシンプルに「いま創っているもの」が面白いかどうかに目が向くようになりました。

平成で思考が止まっているような人だと新しい発想が出てこない。「メタバースやゲームってこんなものでしょ」というような人には「面白くない」とはっきり物言うようになりました。

逆に自分が考えたことを若い子に「面白くない」と言われることもあり、素直に「考え直す」と言ってもいます。

-メタバースでは余計なフィルターがなくなるということでしょうか。

さわえ:そうですね。メタバースではなにしろ、自ら「やってみる」ことが大事です。評論家のような姿勢でいるともったいないです。フィルターの無い視点で「面白いものを面白い」と楽しめる姿勢が大事です。

【さわえ みかプロフィール】
株式会社HIKKY  COO/CQO

プロヘアメイクからイラストレーターへ転身、学生時代から得意だったイベント企画運営で多くのクリエイター、コミュニティと繋がりマルチコンテンツ制作を続ける。スマートフォンゲーム開発やウォルト・ディズニー等のプロモーション業務を通してアートディレクターに転身、ヒットコンテンツを多数、世に送りだす。マンガ雑誌連載やSNSのコミュニティマーケティングなどを手掛けながらまったく新しい手法で、2017年末からVR空間での活動を開始。HIKKYのクリエイティブを統括。プラットフォームの枠組みを超え、誰もが自由にメタバースを行き来できる未来を目指している。2児の母であり、娘は母の使うアバターも母として認識している。 

【さわえ みかのStoryを作った本】
『陽気なギャングが地球を回す』著者:伊坂幸太郎 出版社:祥伝社

【イベントスケジュール】
バーチャルマーケット2022WINTER(2022年12月3日〜18日)

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