2023.1.5

映画『THE FIRST SLAM DUNK』の制作を手がけた、ダンデライオンのリモートクリエイティブへの挑戦。

StoryNews編集部

THE FIRST SLAM DUNK ダンデライオン

2022年12月3日に公開し、瞬く間に大きな注目を集めている映画『THE FIRST SLAM DUNK』。そして、同作のアニメーション制作に携わったのはダンデライオンアニメーションスタジオ(以下、ダンデライオン)です。

これまでに数々の人気アニメの制作を手がけてきた同社はコロナ禍をきっかけに、リモートデスクトップアプリ「Splashtop(スプラッシュトップ)」とワコムのペンタブレットを組み合わせて、リモートでのアニメ制作に取り組んでいます。一般的にアニメ制作はひとつのスタジオに集まって進めるのが当たり前と言われてきた中、ダンデライオンはどのようにリモートでのアニメ制作を進めていったのでしょうか?

2022年11月18日に開催された株式会社ワコム主催のイベント「コネクテッド・インク2022東京」では「ダンデライオンアニメーションスタジオのリモート制作への挑戦!」と題したセッションが行われました。そのセッションの模様をお届けします。

【セッションの様子の動画】

ダンデライオンの社員の7〜8割が、リモートワークでアニメ制作

「今ではSplashtopやワコムのツールは欠かせないものになっています」

セッションの冒頭、ダンデライオン映像制作室室長・テクニカルスーパーバイザーの西谷浩人氏はこのように語りました。アニメ制作はひとつのスタジオにスタッフが集まり、制作を進めていくのが当たり前と言われている世界。ご多分に漏れず、ダンデライオンもひとつのスタジオに集まって制作を進めていくスタイルをとっていました。

そんな働き方が変わるきっかけとなったのが、新型コロナウィルスの感染拡大です。物理的に出社ができない環境になり、試験的にリモートワークを導入していったと言います。

「アニメ制作はひとつのスタジオに集まって進めるのが業界の当たり前だと思われていて、『リモートでアニメ制作ができるわけがない』という考え方が一般的でした。ただ、コロナ禍で物理的に出社が難しくなり、リモートワークの導入を考え始めました。もちろん、今までリモートでアニメ制作をしたことがないので、まずはリモートワークがしやすそうな部署からテスト的に初めていき、少しずつ対象範囲を拡大していきました」(西谷氏)

リモートワークに備えて、社内インフラを増強

リモートワークを開始した頃を振り返る西谷氏

ダンデライオンでは、2020年3月にModelUnitから検証を目的としたリモートワークを開始。その後、3月下旬から全社のリモート化に向け、全社テレワーク対策タスクを進めていき、4月から順次、リモートワークを開始していきました。

「最初は自宅にインターネット回線がないスタッフもいたので、ポケット型Wi-Fiを支給するといったこともやっていました」と西谷さんは笑いながら振り返ります。

リモートワークが本格的に進んでいったことで、ダンデライオンは基幹ネットワークなど社内インフラの増強を検討し始めます。そして、2020年8月には基幹ネットワークと社内インターネットを10G化することにしました。

「リモートワークの機会が増えることで、物理的なデータの出入りが大きく増えるので、まずは会社全体としてパイプラインを整備しよう、と。また、さまざまなクラウドサービスを使う必要もあったので、社内インフラの増強に着手しました」(西谷氏)

そうした環境整備によって、開始当初よりもリモートワークがやりやすい環境となり、現在は社内スタッフの7〜8割がリモートワークをメインに働いていると言います。

「バックオフィスの人は出社しなければ対応できない仕事もあるので、週に何回かは出社していますが、それ以外は基本的にリモートワークがメインです。この2年でだいぶ社内にもリモートワークが浸透したと思います。ただ、まだまだ手探りの部分はあり、コミュニケーションの部分などは改善していかなければ、と感じているところです」(西谷氏)

Splashtopとワコムの活用で拡がったリモート制作の可能性

株式会社ワコム 代表取締役社長兼CEO 井出 信孝 氏

そんなダンデライオンのリモートワークの浸透に一役買ったのが、リモートデスクトップアプリ「Splashtop(スプラッシュトップ)」とワコムのペンタブレットです。Splashtopを活用することにした理由について、西谷氏はこう語ります。

「リモートワークを始めてから試行錯誤を繰り返していて。リモートデスクトップに関しても、いくつかのツールを使わせていただいたのですが、その中でもう少しセキュリティ面に優れていて、PCの管理がしやすいツールはないかなと思っていたんです。いろいろと調べたところ、Splashtopのサイトを見つけました。業界内でもSplashtopを活用している会社はいくつかあったことから、『テストさせていただけないでしょうか?』と連絡したんです。それがきっかけでSplashtopを活用していくことになりました」(西谷氏)

2022年5月にSplashtopの検証を開始し、7月には本格導入をスタートした同社ですが、検証中にスタッフから「Splashtopを使っているときに、一緒にペンタブを使うにはどうしたらいいか?」という声があり、ワコムに問い合わせをしたところ、すぐに返事があり、ワコムのペンタブレットを組み合わせることになりました。

スプラッシュトップ株式会社 チャネルセールスマネージャー 中村 夏希

Splashtopはワコムから技術提供を受け、リモート環境でペンタブレットが使用できる機能「リモートスタイラス」を開発し、2021年3月から提供を開始しています。これはSplashtopの通信ネットワークや通信セキュリティを活用し、筆圧やペンの傾きといった情報をローカルPCと遠隔PCの間で転送しあうというものです。

このリモートスタイラスについて、ダンデライオンで採用・広報を担当する山崎拓哉氏は「“描く”という人間が持つ根源的な楽しい感覚を損なわないテクノロジーを提案されていると感じます。また、最初の実証実験では描画にタイムラグが発生していたのですが、数日~数週間のアップデートで見る見るうちに良くなっていき、レスポンスのスピードが上がっていった。改善のスピード感にもすごく驚きました」と言います。

リモートスタイラスについて 語る山崎氏

「単純にスペックが上がっていくだけのテクノロジーの進化の仕方をするのではなく、『そもそも人間がモノをつくるのはどういうことなのか、また、それにテクノロジーがどう寄与できるのか』ということを考えた上でこうしたツールを作って頂けているところが非常に頼もしいなと感じます」(山崎氏)

コロナ禍と言われ始めてから、もうすぐ3年。西谷氏は「今後もリモートワークは続いていくもの」とした上で、今後の展開についてこう語ります。

「現在、現場で働くスタッフからの意見を取り入れているところなのですが、そういった意見をSplashtopやワコムにも共有させていただき、お互いが上手く連携しながら、より良いアニメ作品を制作できるような環境をつくっていきたいですね」(西谷氏)

また西谷氏に続き、山崎氏も「アニメ制作の現場は、こうしたツールを開発してくださる人たちに支えられている。これからも、より良いアニメ作品を制作することを目的に二人三脚で歩んでいけたら、と思っています」と語り、セッションは幕を閉じました。

【登壇者プロフィール】

西谷浩人 (にしたに・ひろと)

株式会社ダンデライオンアニメーションスタジオ
映像制作室 室長/テクニカルスーパーバイザー
1995年日本のCG黎明期からキャリアスタート。数々の案件で研鑽し、 2004年公開のCG長編映画「APPLESEED」で、Sim(シミュレーション)のリードを担当し、以降Rig、Sim周りをメインとしたテクニカルや開発業務を中心に活動してきている。今年、12月公開の映画『THE FIRST SLAM DUNK』では、R&D リギングスーパーバイザーとしてテクニカルの要を担う。社内では制作室長として、アーティストサポートからシステム担当もこなすプレイングマネージャートして忙しい日々を送っている。

山崎 拓哉(やまさき たくや)

株式会社ダンデライオンアニメーションスタジオ
経営管理室 採用広報
1997年キャリアをスタート。モデル制作、アニメーション、コンポジットコンセプトアーティストと幅広く活躍してきた。2009年公開「ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~」ではキャラクターの心の機微を会話で表現するシーンを繊細に作り上げている。ディレクション作品には、アイドリッシュセブン『RabbiTube クリエイター』にチャレンジ!!、ロボマスターズ等がある。2018年までルック・コンポジットユニットのリーダーを務める。
現在は、フリーに転向し、採用広報担当部署に所属。新人発掘や会社PR業務の他に、コンセプトアートの指導や新人制作へのCG概論指導等、育成業務にも力を入れている。

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