2023.1.31

【Oasys】ブロックチェーンゲームの本質的価値が2023年に作られる

StoryNews編集部

Oasys PTE. LTD 代表取締役 松原亮

Oasys PTE. LTD. Representative Director 松原亮

“次世代のインターネット”と称され、2022年に大きな注目を集めた新しい概念「Web3」。“分散型”を軸にした新しいインターネットの世界を実現するにあたって、欠かすことのできない基盤技術と言われているのが「ブロックチェーン」だ。

データの改ざんが極めて困難、システムダウンが起きない、取引の記録を消すことができない、自律分散のシステムといった特徴を持つブロックチェーンを“ゲーム”に特化した形で開発しているスタートアップがいる。シンガポールに拠点を置く「Oasys(オアシス)」だ。

Oasysは「Blockchain for Games」をコンセプトとするゲームに特化したブロックチェーンプロジェクト。従来の代表的なブロックチェーンは、アイテム交換などの処理速度が遅い場合があり“ガス代”と言われる取引手数料もユーザー負担となるため、大量の処理をするゲームには不向きと言える状態にあった。

そこでOasysはブロックチェーン上での処理レイヤーを2層構造にし、パブリックチェーンとプライベートチェーンを組み合わせることによりでスピード感のある取引を実現する。また、現在ブロックチェーンゲームは、特に仮想通貨に親しみのないユーザーにとっては分かりづらい、使いづらいという問題もあるため、ブロックチェーンゲーム全体のUXを改善することでユーザーの裾野を広げていく狙いがあるという。

2022年7月には米VCのRepublic Capitalをリードに約25億円の資金調達を実施。そして、プロジェクトの初期バリデータ(ブロックチェーン上の取引検証者)には、バンダイナムコ研究所、セガ、グリー、Ubisoft、Netmarbleなど国内外の大手ゲーム企業が参画している。

2022年はランニングやウォーキングをすることで仮想通貨(暗号資産)を稼ぐことができるブロックチェーンゲーム「STEPN」などが盛り上がった1年でもあった。その一方で、さまざまな課題があるのも事実。そうした状況を踏まえた上で、Oasysが考えるブロックチェーンゲームの可能性について迫っていく。

ゲーム特化のブロックチェーンを開発しようと思ったワケ

photo / Yuto Kuroyanagi

──Oasysはどういうきっかけで立ち上がったプロジェクトなのでしょうか?

松原:まず、Oasysについて簡単に説明すると、ゲームに特化したブロックチェーンの仕組みです。何を目指しているかと言うと、今後来るであろう“マルチバース時代”におけるブロックチェーンをベースにしたゲームの基盤を開発していく。そういうプロジェクトになっています。

もともと、スティーヴン・スピルバーグが監督を務めたSF映画『レディ・プレイヤー1』(原作は『ゲームウォーズ(アーネスト・クライン著)』という小説)が公開された2018年ごろから「メタバース空間上で実際にモノのやり取りができたり、遊べたりする世界があったら楽しいよね」という話はしていたんです。

とはいえ、いきなりゲーム特化のブロックチェーンを開発し始めたわけではありません。「My Crypto Heroes」というブロックチェーンゲームを弊社の源流の一つであるdoublejump.tokyoからリリースしました。

My Crypto Heroesは、歴史上のヒーローを育成してバトルを行うMMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)のゲームです。ゲーム内で入手したヒーローNFTやアイテムNFTは、売却して換金できるという仕組みになっています。

2018年にリリースし、その1年後の2019年8月にはユーザー数とトランザクション数でMy Crypto Heroesは世界1位の数字を記録しました。その後、本格的にブロックチェーンの波がやってきたわけですが、ゲームを開発する上で大きな課題も生まれてきました。

──それはどういう課題だったのでしょうか。

photo / Yuto Kuroyanagi

松原:ブロックチェーンはまず金融領域から活用が進み、DeFi(分散型金融)といった言葉が生まれ、世の中に浸透していきました。

金融を中心にブロックチェーンの活用が進んでいった結果、ゲームで利用しているチェーンが詰まってしまい、取引のスピードが遅くなったり、手数料が高騰してしまったり、まともにゲームができなくなってしまうという状態になってしまったんです。アイテムの交換やキャラクターの強化1回につき毎回1時間、ひとつのアイテムを交換するのに毎回1万円かかってしまう、こんなゲームは誰もやりたくならないですよね。

そんな状態に陥ってしまい、次はどのブロックチェーンを使おうか考え、翌年から海外も含めて、いろんな選択肢を模索しました。ただ、どれも満足できるものではなく、「それなら自分たちで作ってしまおうか」となったんです。

そのタイミングで、大手ゲーム会社からの出資や事業提携の話がありました。大手ゲーム会社にはいくつものIP(知的財産)があります。

「AというIP」の中にもいろんなシリーズがあり、別の「BというIP」にもいろんなシリーズがあるわけです。その異なる世界を行ったり来たりできるようにしたい、という話を聞いたときに「これはマルチバース(自分のいる世界とは別に他の世界が複数存在するということ)」だなと思いました。

であれば、いろんな世界を繋がるものとして真ん中にレイヤー1である「ハブレイヤー(Hub-Layer)」を置き、その上にレイヤー2として各世界観ごとの「バースレイヤー(Verse-Layer)」を置く2層構造にしたらいいのではないかと考えたんです。それが、現在のOasysの仕組みになっています。

具体的には、レイヤー1(Hub-Layer)とレイヤー2(Verse-Layer)技術を組み合わせた独自の「Oasysアーキテクチャ」を採用しているのですが、OasysアーキテクチャはPoS(Proof of Stake)をコンセンサスアルゴリズムに採用しています。

エコシステムの拡大と環境問題の双方に配慮された設計にすることで、ゲームのプレーヤーは高速かつ手数料無料でのサービス体験が実現でき、ゲーム開発者はブロックチェーンを活用したゲーム内決済やNFTアイテムに関わるマルチチェーン対応、他ゲームとの連携が容易できます。

大手ゲーム会社が続々と参画、Oasysにしかない強みとは?

photo / Yuto Kuroyanagi

──Oasysは初期からプロジェクトに大手ゲーム会社を巻き込んでいます。

松原:やるからにはゲーム業界全体を巻き込んでいった方がいいと思い、プロジェクトの初期バリデータには国内外の大手ゲーム会社に参画してもらいました。

──大手ゲーム会社も現状に対する危機感などはあったのでしょうか?

松原:ブロックチェーンゲームに関する話は2〜3年前からずっとしていて興味は持っていただいていました。NFTが大きな盛り上がりを見せたこともあり、大手ゲーム会社とも取り組みが始まりました。

もともと、日本はゲーム業界のシェアをほぼ100%持っていた時代があります。オンラインゲームの盛り上がりに出遅れてしまった。当時の日本は環境が特殊でフィーチャーフォンが一般的だったこともあり、モバゲーやGREEが盛り上がったのですが、結局はAppleやGoogleにシェアを奪われてしまいました。

現在、総合的には、ゲーム業界における日本のシェアは2〜3割ほどです。日本はゲーム人口が多いですし、コンテンツの数も他国と比べると圧倒的です。まだ全然勝機はあると思っています。

海外企業にシェアを握られるのではなく、分散化と言っているくらいなので、みんなで作ろうよ、と。それでOasysはゲーム業界全体を巻き込んだプロジェクトにしています。

──Oasysの強み、特徴は何でしょうか?

松原:まず、Oasysの仕組み自体が先進的で、2層構造にすることでスピード感のある取引を実現でき、なおかつガス代が無料というのも強みとなっています。他社が真似できない最大の強みとして挙げられるのが、長年ブロックチェーンゲームを開発し、運営してきた実績と信頼ですね。これがあるからこそ、大手ゲーム会社をプロジェクトに巻き込むことができた。。

海外では、Andreessen Horowitz(a16z)やセコイア・キャピタルなど、超巨大なVCを巻き込み多額の資金をつぎ込むパワープレイをやっているところが多いですが、日本はコンテンツで勝負するのが勝ち筋だと思います。

ブロックチェーンゲームの本質的価値の“型”が作られる

photo / Yuto Kuroyanagi

──松原さんはブロックチェーンゲームの現状をどう捉えていますか?

黎明期からやってきた立場からすると、ベトナムのSky MavisがリリースしたNFTゲーム「Axie Infinity」が2021年に大流行したことで、ブロックチェーンゲーム自体のユーザー数が大きく変わったと思っています。4年前のMy Crypto HeroesのDAU(1日あたりのアクティブユーザー数)は2万人ほどでしたが、約3年後にはAxie Infinityで100倍の200万人になりました。ただ、今は落ちてきているという状況です。

Axie Infinityはフィリピンで最も流行ったのですが、コロナ禍で何もやることがなく、平均月収が3万円と言われている国において、ゲームをして10万円稼げるとなったら誰もがやるじゃないですか。そのインセンティブをフックに爆発的に流行ったんです。

「稼げる」というインセンティブが強すぎて、マスアダプション(大衆化)にも手がかかりかけたのですが、トークンの価格に頼りすぎるあまり、“ポンジ的なスキーム”になってしまい、仕組み自体がサスティナブルではないことがわかったんです。これでは続かない、と。

これから、ブロックチェーンゲームは真っ当な進化を遂げていくと思うのですが、まず大事になるのはゲーム自体の面白さやIPの力などの真っ当な需要です。それをきちんと踏まえた上で、ブロックチェーンならではの「驚き」や「面白さ」の要素、スマホゲームのときの「縦型でソーシャル機能がある」というような新しい体験を入れていくことが重要になっていくのではないかと思います。

そして、ブロックチェーンゲームで成功モデルができてくると、大型IPが乗っかってくるようになる。そうしたら、200万人だったDAUの桁が変わり、おそらくDAU2億人のゲームが生まれる可能性もあると思っています。Oasysは、そこに向けてチャレンジしていきます。

──ブロックチェーンゲームならではの「要素」は、2023年にどのように進化していくのでしょうか?

photo / Yuto Kuroyanagi

松原:まず、ひとつ目は「経済」を生み出すという要素です。トークンにより貨幣を生み出せるようになったこと、NFTによりデジタルアイテムに流動性与えたことは、ゲームを根本から変えるほどの大革命です。

ブロックチェーンを活用することで、デジタルアイテムに唯一性を持たせることができ、高価なブランドも作れるようになる。現実世界でいうルイ・ヴィトンやプラダのようなブランドを作り、そのアイテムを売っていくということも可能になります。

二宮金次郎の言葉に「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」があります。ブロックチェーンゲームが生み出す「経済」は、新たな可能性を生むと同時に、一歩間違えば犯罪になりかねないくらいの影響を与えてしまいます。FTX事件をみれば明らかですが、ゲームの影響力は“ゲームだからよい”では済まない世界に突入します。

ふたつ目は、「分散型だからできる体験」の要素です。NFTのインタオペラビリティで可能になることですが、自分のアバターや持ち物がさまざまな世界(マルチバース)で利用できるようになる。ゲームAのキャラクターや武器のデータが、ゲームBでも使えるということです。但し、現状はお互いのゲーム同士の許諾が都度必要なので、実現に向けて、NFTのメタデータ規格の整備が必要となるでしょう。

UGC(User Generated Contents)の可能性も広がります。ユーザーが保有するNFTやトークン、戦歴データなどを横串として、「ゲームタイトルA」を中心にユーザーが派生版の様々な「ゲームタイトルA´」を作っていくということです。今後、UGC(User Generated Contents)によって、巨大テーマパークが構成されていくでしょう。

三つ目は「他の新テクノロジーとの組み合わせ」によるものです。ブロックチェーン単体でユースケースを考えるのではなく、AIやXR等の新テクノロジーを組み合わせることにより、新しい体験が生まれます。例えば、Chat GPTなどをAIと組み合わせたりすることで生まれる体験は容易に想像がつきます。

──2023年は、面白さを追求しながら“型”ができるフェーズになると。

photo / Yuto Kuroyanagi

そうですね。ゲームとしての面白さを追求しつつ、ブロックチェーンならではの「あたらしい体験」と「成功モデルの要素」を追求する1年になるのかなと思っています。

第2回に続く)

【松原亮のプロフィール】

Oasys PTE. LTD. Representative Director

立命館APU卒業後、アクセンチュア等を経て、2018年からgumiにて、株式会社gumi Cryptos、ブロックチェーンコンテンツ協会立ち上げ、2021年doublejump.tokyoに参画、同年10月より現職

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