台湾が誇る豊かな農作物の産地、台南市の魅力とは
台南市は、台湾南西部に位置する市街地。「台湾第四の都市」「台湾の小京都」などと呼ばれ、現代的な街並みと歴史ある文化財、豊かな自然が共存している街だ。その台南の農水産物をPRするため、台南市政府農業局は、2023年12月14日に大阪で「台南農水産物プロモーション交流会」を開催した。
本会は、台南の農産物の新鮮さ、栄養価の高さ、安全性の品質保証を象徴する「地元の味を旬のうちに」と題したキャンペーンのひとつ。平坦な地形と快適な気候、豊富な灌漑用水に恵まれた台南は、台湾で最も豊富に農産物を生産している街だ。その魅力を発信し、農産物の輸出拡大や台南への観光誘致につなげたいというのが最大の目的となっている。
会場には、卸売業やスーパー関連業者、各種メディア関係者が出席。台南市長の黄 偉哲(コウ・イテツ)氏も登壇し、台南の農産物や観光資源の魅力を積極的にアピールした。また20以上の卸業者や流通業者が台南から参加し、特産品や人気のお土産品を紹介した。
多種多様な農水産物がつくられている台南
一年を通して温暖な気候を活かし、台南ではさまざまな農作物が作られている。3~4月にかけては、繊細な味わいと、ほどよい甘み・酸味が特徴のパイナップル、6~7月はジューシーで色鮮やかなマンゴー、8~9月には果肉がふっくらしたビタミンCが豊富な文旦など、旬を楽しめるフルーツが台南グルメの代表格となっている。また、これらの農産物を使ったドライフルーツや菓子などの加工品も数多く製造されており、お土産品としての需要も高いという。
また、約1万6千ヘクタールの養殖面積を有する台南市は、近年水産物の海外輸出も積極的に推進している。淡水魚のティラピア(イズミダイ)は、台湾国内では台南が最大の産地で、年間生産量約2万8千トン、総生産額は12億元を超えるという。また、“世界一の養殖魚”といわれるサバヒーも、台湾で伝統的に食されている魚の一種だ。会場では、おやつ感覚で食べられる「サバヒーチップス」や、白米や料理にかけて味わう「サバヒーフレーク」など、サバヒーの加工食品が展示されていた。
ティラピア、サバヒーはともに日本であまり馴染みのない魚だが、台湾ではいずれもポピュラーな食用魚だという。海外への輸出も積極的に行われており、今後日本でも流通するようになれば、日本の食文化のさらなる広がりに期待できそうだ。
台南の農作物およびその加工品、水産加工品などは、いずれも国内の厳しい管理下でチェックが行われている。そのため、食の安全性への意識が高い日本人でも安心して食べられるという点も、台南の農水産物のアピールポイントだという。
会場を彩る台南の魅力
食べ物だけではなく、花も台南の重要な農産物のひとつだ。“蘭王国”とも呼ばれる台湾は、世界最大の蘭の輸出量を誇る。特に胡蝶蘭の生産が盛んで、世界に流通している胡蝶蘭の3分の1が台湾産、さらにそのうちの半数を台南産が占めているという。春になると、台南市内では台湾最大の蘭の見本市「台湾国際蘭展」が開催され、毎年決められたテーマに合わせて多種多様な蘭が集まる。黄市長は「美しい蘭を見に、春になったらぜひ台南に来てほしい」とアピールした。
会場では、日本でも人気の高い台湾カフェ・台湾甜商店と台南市農業局がコラボした、本交流会のための特別なグルメが提供された。タピオカドリンクには、台南の農産物を使用した文旦柚子茶から作られたフルーツティーを使用。さわやかな甘さが際立つマンゴーは、台湾の伝統的なスイーツ・豆花(トウファ)とともに提供された。黒ゴマの風味が濃厚なゴマ混ぜ麺、香ばしく揚げたトーストに具だくさんのシチューをはさんだ「棺桶パン」など、ドリンクやスイーツ以外の軽食メニューも並び、参加者は多彩な台南グルメを楽しんでいた。
流行で終わらせず、台南と日本との関係を築いていきたい
交流会の間、参加者との歓談を楽しみ、写真撮影にも気さくに応じていた黄台南市長。改めて本会の主旨について、話を聞くことができた。
「実は、台南市と大阪市は近年交流が多く、大阪・中之島エリアで開催中の『OSAKA光のルネサンス』には台南市のランタンを出展し、開会式にも出席している。せっかく大阪を訪問する機会を得たので、イベントに参加するだけではなく、台南市の豊かな農水産物を大阪の皆さんにぜひ紹介したいと思って交流会に参加することにした。本会を、台南の魅力をもっと知ってもらえるきっかけにしてほしい」(黄偉哲台南市長、以下同)
日本では一時期の“タピオカブーム”の熱は落ち着いたものの、現在も都市部を中心に台湾グルメの店は人気だ。特にZ世代と呼ばれる若者からの支持が高いということは、黄市長も把握しているという。日本で台湾グルメが受け入れられている要因として考えられることはあるか?と尋ねると、黄市長は「近年の台湾グルメの品質向上が挙げられるのでは」と分析する。
「近年、台湾には世界的に有名なレストランが増え、台南市の飲食店も『ミシュランガイド』に50店以上掲載されている。また、飲食店で食べる料理以外にも、農産物の加工品の品質もどんどん上がっているため、日本の方も、よりクオリティーの高い台湾グルメに触れる機会が増えているのではないか。台湾の料理やスイーツは日本でも数多く紹介されてきたが、いま流行しているもの以外にも、台南市には伝統的かつおいしい料理が豊富にある。一過性の流行で終わらせないためにも、日本の方に台湾・台南の魅力をもっと知ってもらいたい」
台南の農水産物の販路拡充、観光客誘致が本会の目的であることは前述のとおりだが、その背景には、ここ数年のコロナ禍や円安の影響による、日本からの訪台者数の減少が挙げられるという。黄市長は、台南の農水産物の魅力をアピールすることで台南への関心を高め、日本からの旅行者数の回復に期待したいと意気込む。
「台湾の旅行者が日本に観光に行くとき、その多くが東京や京都を選ぶが、台湾も同様に、多くの旅行者は首都の台北を選ぶ。もちろん台北も魅力的な都市だが、台南にもぜひ訪れてほしい。特に台南と日本の関係は深く、日本統治時代の文化財や施設も数多く残されているので、歴史や文化に触れるいい機会になるはず。2024年には台南市開拓400年を迎え、『台湾ランタンフェスティバル』、『台湾国際蘭展』の開催も控えているので、ぜひグルメや観光を楽しみに、台南市に足を運んでもらいたい」
会場のそこかしこで商談や交流が行われ、常に台湾語と日本語が飛び交っていたこの日。農水産物や食文化がきっかけとなり、台南と日本のさらなる結びつきにつながることを期待したい。
【黄偉哲(コウ・イテツ) のプロフィール】
台湾・台南市 市長
台湾台南市出身の農学者、公衆衛生学者、政治家(民主進歩党)。第6・7・8・9期立法委員(国会議員)を務め、社団法人公民監督国会連盟の議員評価では第一位や優秀立法委員に計17回選出。2018年より現職。