2023.10.24

『Genesys Cloud CX®』で見据える日本市場への展開

StoryNews編集部


世界100カ国以上で毎年700億件以上のカスタマーエクスペリエンスをサポートしているジェネシスクラウドサービス株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ポール・伊藤・リッチー)は2023年10月5日、都内でメディア向けイベントを開催。当日は会長兼CEO トニー・ベイツ氏ほか最高製品責任者を務めるオリヴィエ・ジューヴ氏、最高戦略・業務執行責任者を務めるピーター・グラフ氏ら経営幹部チームが来日した。

SaaS企業にとって、ビジネス成長の重要な指標となるARR(年間経常収益)は、1億ドルがひとつのマイルストーンであるが、ジェネシスは他のSaaS企業をおさえて最も早く10億ドルを達成している。その成長を支えている「Genesys Cloud CX®」システムや、セールスフォース社との戦略的提携、日本におけるパートナー戦略について、経営トップたちが語った。

「Experience as a Service」という考え方

コンタクトセンター業務やカスタマーサービス向けのソフトウェア開発などを手掛けながら成長を続けてきたジェネシス。「顧客向けサービスの管理運用やパフォーマンス向上において、“Experience as a Service(=体験をサービスの一環とする)”という考え方を非常に重要視している」と、CEOのベイツ氏は語る。

多種多様な経済活動が広がる中で、カスタマーサービスの形態は変化し続けることが求められており、エンド・トゥ・エンドでのCX(カスタマーエクスペリエンス=顧客体験)が重要になってきているという。ジェネシスが毎年実施している、コンシューマを対象にした調査では「コンタクトセンターへの問い合わせなどで不快な思いをした顧客の約3割が競合他社のサービスに移ってしまう」ことが明らかとなった。

このような観点から、あらゆる業界業種の企業において、CXは顧客戦略の最重要項目になると言える。

国内市場シェアトップの「Genesys Cloud CX®」

これまでコールセンターやコンタクトセンター業務では、効率性・効果性を重視して、いかにコストを下げるか、ということが課題の中心とされてきた。しかし、効率性や各顧客とのやり取りの自動化だけでなく、これらの業務がCXにもたらす効果を見据えたときに、オーケストレーション(複数のデータを管理し、調和させて最適化すること)が重要になってくるという。CXのみならずEX(エンプロイーエクスペリエンス=従業員体験)までを含めた包括的な業務効率とサービス品質の向上を実現するのが「Genesys Cloud CX®」システムであり、ジェネシスが掲げる「エクスペリエンス・オーケストレーション」だ。

ジェネシスのプラットフォーム上では、1日約4,500万のインタラクションが発生しており、約100万人の取引企業の従業員が、コンタクトセンターやカスタマーサービス業務を遂行している。時間に換算すると、約5,600万分間が通話時間として費やされていることになる。さらに1人の従業員が顧客との対応内容を要約する作業には、通常2~4分間ほどかかるそうだ。この作業はAIを活用することで、わずか10秒間に短縮でき、圧倒的なEXの向上につながる。

カスタマーサービスに携わる従業員は、常に顧客データに触れているので、これまでの問合せの履歴や経緯など、その顧客にまつわる全てのことを知っている。そのため、それぞれの顧客に親身に寄り添うことができ、さらに「Genesys Cloud CX®」を活用することで、よりパーソナライズされた対応が実現するというのだ。これは、日本市場においても非常に親和性が高く、IDCによる2022年国内CRMアプリケーションシェアの調査では、ベンダー別でジェネシスが24%を占め、トップという結果が出ている。

AI機能が拡げるサービスの可能性

AIの研究開発に取り組んできたジェネシスは、AI技術に関する開発者を400人以上抱えている。最高製品責任者のジューヴ氏は「日本に向けては、新しいユースケースの構築を進めており、テキストの要約や抽出、変換、生成における改善に取り組んでいる」と話した。

このプラットフォームを活用することにより、業務効率が飛躍的に向上する。また業務担当者、現場の管理者および、部署の責任者はコパイロット機能を使えるようになる。音声化機能や、感情に関する分析などとともに、LLM(大規模言語モデル)の開発にも取り組んでいるそうだ。

日本市場向けに開発中の日本語機能追加については、来年度の第一四半期を目途に様々な要約機能をローンチし、サービスとして展開していく考え。従業員に共有できる業務ナレッジやサポート、感情・共感分析、機密情報の再編集、会話記録の自動要約とCRMへのエクスポートなどを予定しているという。これによって、国内企業からの需要拡大と、消費者目線ではCXの高水準化とサービスの充実が期待される。

セールスフォース社との戦略的提携と大阪への進出

2023年9月、ジェネシスはセールスフォース社との戦略的提携により、顧客体験・関係管理ソリューションを強化する「CX Cloud from Genesys and Salesforce」をDream-forceで発表した。このような統合は業界初であり、CXとEXを結合するソリューションとして大きな注目を集めている。ジェネシスのExperience as a Serviceおよび、セールスフォース社のCRMの機能をユニファイドソリューションとして活用することができる。

実際、国内におけるジェネシスの取引企業の22%がセールスフォース社のシステムも利用している。同ソリューションにより、企業は両社のシステムを活用することも、どちらか一方のシステムを使用することも可能となる。

今回の来日イベントで発表されたのが、AWS大阪リージョンの開設。東京リージョンに続き、フルサービス「Genesys Cloud CX®」を日本国内2箇所で提供する。これにより、大阪をはじめとする西日本全域において、スピーディーなサポートと強固な災害復旧オプションが実現する。

クラウドサービスを展開する上で、データ保全と安定性を担保することは非常に重要だ。ジェネシスは、現在世界中に18のリージョンを設置してクラウドサービスをサポートしている。データ保全の観点から、日本にあるデータは日本国内とどめておくことが必要だという。

近年、想定外の災害が多く発生していることもあり、災害時の復旧に対する備えは急務であると、経営チームは口を揃える。医療や金融、公共サービスなど、災害時のシステムダウンによる深刻な影響が予想される企業にとっては、非常に重要なポイントだ。東京と大阪という地理的な距離を保つことにより、1つの事象や災害による影響を大幅に軽減でき、より安全に運用できるという。

今後の日本におけるパートナー戦略

これまで、テクノロジー企業と深い関係性を結んで開発を推し進めてきたジェネシス。ベイツ氏は「日本においてもローカルなテック企業やアプリ開発企業と深い関係にあり、これをさらに継続させていきたいと」と述べている。

また、日本法人代表取締役社長のリッチー氏は「“おもてなし”という観点で、取引企業や消費者のニーズに合ったサービスやソリューションを、自社他社問わずに提案しながら最適なパートナーシップを築いていきたい」と話した。「生成AIの展開」と「取引企業がエンドユーザーに展開するCXへの貢献」という2つに重点を置いた戦略を進めるという。

カスタマーサービスソリューションにおけるNO.1企業として、日本市場にあらゆる可能性を見出し、投資にも意欲的なジェネシス。革新的なAIクラウドシステムによるワンランク上のCXが、あらゆる業種で展開されることを期待したい。

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