2023.4.11

【go-to wine shop & bar】ニューヨークワイン文化をミレニアル・Z世代に発信

StoryNews編集部


『GO-TO WINE』代表 後藤 芳輝
『go-to wine shop & bar』代表 後藤 由華

ワインファンの間で人気が高まるニューヨーク州産の「ニューヨークワイン(以下NYワイン)」。生産量はアメリカ国内ではカリフォルニア州、ワシントン州に次いで第3位。NYワインはニューヨーク州内のAVA(American Viticultural Area)と呼ばれるワイン⽣産地域で作られる。フィンガーレイクスAVAとロングアイランドAVAの2つが代表的産地で、現在11のAVA に471のワイナリーを抱える一大ワイン産地となっている。

西海岸の産地と対照的に冷涼な地域を産地とするNYワインは「繊細でエレガント」「アルコール度数が低い」といった特徴を持つ。世界的に食文化は「ライト化」「ヘルシー化」がトレンドとなっており、気軽に楽しめるNYワインが、アメリカでは特にミレニアル世代に受け入れられている。

日本に本格的に輸入され始めたのは約10年前。当時からNYワインを輸入、卸販売している草分け的な存在のGO-TO WINE(代表:後藤芳輝/東京都港区)が世田谷区経堂でNYワイン専門店『go-to wine shop & bar』(代表:後藤由華)を昨年12月18日オープンにさせた。

NYワインについて語る後藤芳輝氏

代表である後藤芳輝氏は、14年間ニューヨークで生活した。アメリカに渡った理由は、所属していた空手流派のニューヨーク支部から声がかかり、空手の指導をすることだった。その後、国連の仕事をしていた後藤由華氏(ショップの代表)とニューヨークで出会い結婚する。

NYワインを日本に輸入するきっかけは、ニューヨークの友人がワインショップを始める際に声をかけられたことだ。ロングアイランドでの大学院時代にNYワインには馴染んでいたが、なにより「ニューヨークと日本を橋渡しする役割になりたい」(芳輝氏)という想いが強かった。

ニューヨークワインの400年以上の歴史

『go-to wine shop & bar』に並ぶNYワイン

カリフォルニア州でワイン造りがスタートしたのは18世紀末。NYワインの歴史はそれより古い。ニューヨークで入植者らの手によってワイン造りが始まったのはアメリカ建国前の17世紀前半だ。400年以上の歴史を持つNYワインは、順調に発展していった西海岸ワインと比べ、長らく停滞していた。

ニューヨークでは雨も多く冬の寒さも厳しいため食用ブドウに使われるアメリカ系原種のブドウでワインが生産されていた。転機となったのは1950年代末の「ヴィニフェラ革命」と呼ばれるヨーロッパ系品種ブドウの栽培の成功だ。そして、1976年に施行された「ファーム・ワイナリー法」によって、小規模ブドウ栽培農家でもワインの製造・販売が可能となりワイナリーが急速に増え始めた。ファーム・ワイナリー法設立当初、比較的大規模なワイナリーは14社だったが、2000年には100社前後となった。さらに、コーネル大学との産学協同研究による品質の飛躍的な向上も影響し現在の471まで拡大した。

「ニューヨークと聞くと、マンハッタンを思い浮かべる人も多いはず。しかし、ニューヨーク州というのは北海道と九州を合わせたほどの広さがあり、都会だけでなく広大なブドウ畑も保有している」、「現在も家族経営の小規模ワイナリーが大半を占めており生産量は全米の約3.5%に過ぎないが、その希少性と品質の向上、食に対する考え方の変化、ミレニアル世代が消費の主力になったことなどが追い風となっている。もちろん、ニューヨークシティという世界最大級のマーケットが近いというのも強み」(芳輝氏)

和食と相性が合うニューヨークワイン

NYワインとその文化について良く知る常盤努氏

フランスやベルギーの3つ星レストランで修行を積み、現在ワイン・コーディネーター『時の輪』の代表と南青山のフレンチレストラン『L’AS&CORK』でのシェフソムリエを兼務する常盤努氏は、NYワインについて良く知るソムリエの一人だ。

「日本ではまだ、ワインのプロでもNYワインを知らない人がいる。低アルコールのNYワインは和食との相性が良く、日本人の口に合う。これからソムリエがNYワインを知っていけば、日本でもさらに普及するのでは」(常盤氏)

ニューヨーク最大の生産地「フィンガー・レイクスAVA」で製造される「サーモン・ラン  リースリング」は、ほのかな甘みと爽やかな酸味がバランス良く備わり、特に女性からの人気が高いワインの一つだ。

一方、マンハッタンに近い沿岸部の「ロングアイランドAVA」では「ウォルファー・エステート ロゼ」を生産している。ロゼワインはニューヨーカーの夏の定番として人気で、中でも「ウォルファー・エステート ロゼ」はスモークサーモンやパスタ、寿司、中華など様々な料理と相性の良いワインだ。

ニューヨークスタイルを取り入れたショップ

ブルックリン・ワイナリーの外観と内観

はじめにショップをオープンしたいと言い出したのは、由華氏だった。芳輝氏は、インポーターが自らショップを出すことへの抵抗や、商店街の立地で価格帯が高めのNYワインが受け入れられるのかという不安もあり、当初反対した。

しかし、娘たちに自分のやりたいことにチャレンジすることを理想と説いてきた父親が、母親の夢に反対するのはかっこ悪いことだと考え直し、ショップオープンを決意する。「単なるショップではなく、NYワイン文化の発信地にしようと考えた。」(芳輝氏)

『go-to wine shop & bar』は、カジュアルにワインを楽しむニューヨークスタイルが随所に取り入れられる。店舗をデザインしたのは、ニューヨークの「ブルックリン・ワイナリー」を訪れた経験のある川本遼平氏だ。芳輝氏と由華氏がイメージするNYワインのスタイルを一発で理解し、ニューヨークの空間を再現した。

3種のワインを自由にテイスティングできる“フライト”

“フライト”と呼ばれるテイスティングメニューも独自のスタイル。3種のワインを自由にテイスティングすることができるので、好みを見つけるのに最適だ。「フライトはニューヨークならではの文化。日本ではあまり見かけないので、来店者にとっては嬉しいサービスになるだろう」(常盤氏)

由華氏は「NYワインの生産者は『家で普段よりもちょっとゆっくりと食事したいような日に、2人で1本飲めるようなワインを造りたい』と口にしている。こだわり過ぎず、普段の生活の延長でワインを楽しむのがニューヨークスタイル。品種や生産地を知らずに、ラベルを見て直感で楽しんでも良い。今回オープンした店舗は、誰もが自由にNYワインを楽しめる場所となっている」と話す。

『go-to wine shop & bar』の期待を語る後藤由華氏

由華氏は、薬局を営む実家で育った。「お薬を売る場所だけど、悩み事があったり相談相手が欲しければ、いくらでも相談に乗るという店だった」(由華氏)

漠然と将来店を継ぐのだろうと考えていたが、なぜか理数系の教科が苦手だった。文系で何を勉強したいか考え、国際関係学部に進むと政治や国際関係の勉強が面白くなり、アメリカの大学院に進む。念願かなって国連の仕事をしている時に、芳輝氏と出会う。

そして現在、『go-to wine shop & bar』で、実家と同じ商店街の店を経営することになった。ニューヨーカーのような気軽なワインの楽しみ方を紹介しつつ「元気になりたい人はもちろん、ちょっと愚痴をこぼしたい人もどうぞ!というお店にしたい」(由華氏)という。

経堂から新世代向けにワイン文化を発信

黒を基調としたスタイリッシュな『go-to wine shop & bar』の店内

ニューヨークでは地産地消やサステナブルを理想とする食文化が根付いて来ている。NYワインは生産体制においても、早くから「環境負荷の削減」や「労働者の経済的公平性」を追求するなどサステナブルの思想がある。こうしたカルチャーもアメリカで新しい世代に支持される理由の一つだ。

「アメリカでは、ミレニアル世代が、SNSで既成の評価に囚われずにワインを選び始めた、これがNYワインが支持された背景のひとつ」「アルコール度数が低めでサステナブルなNYワインは、アルコール離れが進む日本の新しい世代の嗜好にもフィットするのではないか」(芳輝氏)と期待を語る。

「go-to wine shop & bar」がオープンした経堂は東京農業大学のメインキャンパスがあり、多くの学生が行き交う商店街に位置する。「世界各地のワインを提供するレストランやショップがあり、ワイン集積地エリアでもある。東京農大の醸造科に通う若者たちとのコラボなど経堂から新世代向けにワイン文化を発信していきたい」(由華氏)

『go-to wine shop & bar』のエントランス

【後藤 芳輝のプロフィール】

GO-TO WINE』代表
空手の指導者として渡米、NYに14年間在住。NYワインに出会いその魅力に取りつかれる。帰国後、専門インポーターとしてNYワイン文化を日本に伝え続ける伝道師の一人。

【後藤 由華のプロフィール】

go-to wine shop & bar』代表
ワシントンD.C.とNYに9年間在住し、NY在住時は国連に勤務。帰国後夫婦で日本初のNYワイン専門インポーターを立ち上げる。翻訳・通訳、他インポーターでの勤務なども経て、NYワインの魅力を直接消費者に伝えるべく開業。

『go-to wine shop & bar』
Instagram: gotowine.kyodo
所在地:〒156-0052 東京都世田谷区経堂1-26-15石塚ビル1階(小田急線経堂駅から徒歩5分)

◆『go-to wine shop & bar』のおすすめワイン

【フィンガー・レイクスAVA】

ニューヨーク州産ワインの約90%を産するニューヨーク最大の生産地のワイン
<特徴>大陸性気候でおもに頁岩土壌、生産ワインは白70%、赤30%
<品種>リースリング主体、シャルドネ、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリなど
<トレンド>カベルネ・フラン、スパークリングワインなど

サーモン・ラン リースリング

【ロングアイランドAVA】
マンハッタンからほど近い沿岸部生産地のワイン
<特徴>海洋性気候で砂や砂利の多いローム土壌、生産ワインは赤70%、白30%
<品種>赤はメルロやカベルネ・フラン、白はシャルドネ
<トレンド>ロゼ、アンオークのシャルドネなど

ウォルファー・エステート・サマー・イン・ア・ボトル・ロゼ

◆その他のおすすめワイン

ドクター・コンスタンティン・フラン ドライ・リースリング
ハーマン・J・ウィーマー ドライ・リースリング
ラモロー・ランディング シャルドネ
ブルックリン・ワイナリー シャルドネ
エレメント・ワイナリー ピノ・ノワール
キューカ・レイク・ヴィンヤーズ カベルネ・フラン

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