ISSUE LABがサイエンスアゴラでイベント――「遺伝子組み換え」「ゲノム編集」「遺伝医療」と向き合う対話の場
2025年10月25日・26日、東京・お台場で開催されたサイエンスアゴラ2025において、ISSUE LABによるプログラム「みんなで語ろう!『未来を選ぶ遺伝のハナシ』」が開催された。社会課題と科学技術を“エンタメ”と“対話”の力で伝えることを目的とするこのプロジェクトは、参加者に「遺伝子組み換え」「ゲノム編集」「遺伝医療」という3つのテーマを題材に、科学を「自分ごと」として考える場を創出した。

「科学とくらし ともに語り 紡ぐ未来」。このビジョンのもと、あらゆる人に開かれた“科学と社会をつなぐ広場”として開催されているのが、サイエンスアゴラだ。日本科学技術振興機構(JST)が主催する本イベントは、研究者、市民、企業、行政、学生など多様なステークホルダーが集い、「社会とともにある科学」「科学とともにある社会」の実現に向けた対話と協働の場として機能している。
伝わりにくい科学技術や社会課題を「サイエンス×エンタメ」で伝える
冒頭、ISSUE LABの活動紹介を行ったのは、運営事務局長を務める株式会社ストーリーズ・オン代表取締役の大貫 武(おおぬき・たけし)氏。「サイエンス×エンタメ」で伝わりにくい科学技術や社会課題のテーマを発信するこれまでにないISSUE LABの活動について説明した。

「遺伝子組み換え作物」の価値観や倫理への問い
その後のテーマトークでは、異なる専門分野から3名の登壇者が科学と社会の“いま”を語った。
まず登壇したのは、佐伯恵太氏。京都大学大学院で修士(理学)を取得後、俳優として活動を開始し、現在は科学とエンターテイメントの架け橋になるべく、フリーランスの俳優・サイエンスコミュニケーター(科学コミュニケーター)として活動中。佐伯氏は「遺伝子組み換え作物」をテーマに、技術の仕組み、消費者の認識ギャップなどを可視化。ショートドラマを交えて、単なる“技術の説明”に留まらず、価値観や倫理に触れる問いを投げかけた。

「ゲノム編集」の科学と倫理
続いて、高遠 頼氏が登壇。博士(理学)であり、生命科学系VTuberとしても活躍する彼は、専門である合成生物学とゲノム編集をテーマに説明をした。マンモス復活プロジェクトやCRISPR技術の可能性といった最先端トピックをわかりやすく解説し、「科学は万能ではなく、社会との対話がなければ進めない」と強調。研究者の立場から、倫理と科学の接点を意識することの重要性を訴えた。

「ゲノム医療」の社会的誤解や偏見を減らす
3人目に登壇したのは、鈴木 美慧氏。聖路加国際病院で認定遺伝カウンセラーとして勤務し、日本サイエンスコミュニケーション協会の広報委員会としても活動する彼女は、ゲノム医療の普及と同時に起こる社会的課題に注目。「遺伝的特徴に対する社会的な誤解や偏見を減らし、遺伝的な違いに対する受容度を高める」という観点から、心理支援や正しい情報発信の重要性を訴えた。「ゲノムのことがわかっても動揺しない社会を」というメッセージが参加者に発信された。

科学をどうやって社会に伝えるか?
このテーマトークを受けて、後半のグループワークでは参加者が3チームに分かれ、「どうやってZ世代に伝えるか?」を考えるセッションが行われた。SNSの活用、アニメ、ドラマの活用など、多様な発信手法が議論された。「難しいことをどう噛み砕くか」「正確性と面白さのバランスをどう取るか」といった本質的な問いが、参加者からも積極的に出されたのが印象的だった。参加者の多くが、、ISSUE LABの狙いである“エンタメを通じた科学理解”が確かな手応えをもって伝わったことがうかがえる。

このイベントを通じて明らかになったのは、「科学技術を社会にどう伝えるか」が、もはや専門家だけの問題ではないということだ。一人ひとりが「考える主体」となり、未来を形作っていくために必要なのは、共感と対話から始まる参加の機会だ。
ISSUE LABは今後も、バイオテクノロジー、医療、気候変動、エネルギーなど多様な社会課題に対して、「サイエンス×エンタメ」の手法で発信を続けていく。科学の入り口を広げ、多くの人に“自分ごと化”を育むこのアプローチは、今後も様々なかたちで継続されていく。