曲がったきゅうりが無農薬って本当? 渕上桂樹の『渕上ラジオ』(第15回)
パーソナリティ:渕上桂樹 農業コミュニケーター
どうもみなさん、こんにちは。農業コミュニケーターの渕上桂樹です。
今日も渕上ラジオをお届けしていきたいと思います。よろしくお願いします
曲がったきゅうりが無農薬って本当? 渕上桂樹の『渕上ラジオ』(第15回)はこちらから聴けます
質問:「曲がったキュウリなどを受け入れられるようになれば、農薬の使用量が少なくなるのではないでしょうか? 」
先日、講演会でお話しさせていただきまして、農薬について、農薬がどんなふうに安全性を確保されているのか、というようなお話をさせていただきました。
その後の質疑応答の時に、ご意見をいただいたんですけれども、その時にこういうお話が出ました。
「私たち消費者も、曲がったキュウリのようなものでも受け入れるようにしたら、農薬を使う量も少なくなるんじゃないか」
たしかに、曲がったキュウリでも「美味しいよ」とよく言われますし、実際に美味しいものもたくさんあります。
曲がったキュウリを真っ直ぐにする農薬があるって本当?
よくあるのが「曲がったキュウリは農薬を使って真っ直ぐにしている」という話です。なぜかこれは本当によく聞くんですよね。
でも結論から言うと、キュウリを真っ直ぐにする機能がある農薬というのは多分ないんです。
もしかすると、そういうのを作ろうしている人はいるかもしれないので、現時点では「多分」ってことになるんですけど、キュウリが農薬でまっすぐになることはないという事です。
では、キュウリはどうやって真っ直ぐになるのか、どうして曲がってしまうのかということですが、これは農薬ではなく、土壌のバランスの問題です。
キュウリが曲がる理由、真っ直ぐになる理由
土壌の成分バランスと、水分のバランス。このバランスがちょうど良い状態のとき、キュウリは真っ直ぐになり、そのバランスが崩れてしまうと曲がってしまう、という事なんです。
今聞いて分かったかもしれないんですけど、キュウリっていうのは、曲がっているのが自然というわけでもないんです。これもよく言われるんです。まっすぐなキュウリっていうのは不自然とか。
本来キュウリは曲がるものだみたいな感じで言われるんですけれど、キュウリの本来っていうのをどう定義するのかにもよるんですけど、キュウリが成長するのに一番ちょうどいい適した環境を作ってあげると真っ直ぐになるということなので、逆にキュウリっていうのは真っ直ぐな方が自然なんじゃない?っていう風にも思えるわけなんですよね。
ちょうどいいバランスによってキュウリが真っ直ぐになるっていうことは、それがキュウリにとっての自然な成長の仕方なんじゃないかなって、私はそんなふうに思います。
それなので、「農薬を撒いたからキュウリが真っ直ぐになりました」とか、そういう簡単な話ではなくて、真っ直ぐなキュウリを作るということは、農家の高度な技術と経験によるものなんです。なので、そんな簡単に手っ取り早くキュウリは真っ直ぐになりませんよということなんです。
曲がったきゅうりが、自然かどうか?
たしかに、「曲がったキュウリが自然なんですよ」という情報は割とちらほら目にします。どういうところかというと、自然農をやっていますという人が、スーパーではなくオーガニックマルシェとかで、「これは私たちが農薬不使用で作ったので、曲がってしまったんです」みたいな感じで言われるんですけど、それは正確な情報とは言えません。
正確に言うならば、「土壌の成分バランスが、適切じゃなかったため曲がってしまいました」って言わなきゃならないんですど、そういうふうに、言いながら自分のキュウリを売るのは、嫌じゃないですか。
だから「農薬不使用なので曲がってしまったんです、これが自然なんですよ」という言い方になると思うんです。とは言っても、あんまり正直な売り方じゃないかなというふうには思います。
正直に、「土壌成分が悪かったです」って言いなさいって意味じゃないですよ。
でもね、農薬のせいにしたりとか、そういう売り方っていうのは、誤解を招きますし、それを真に受けた人が「真っ直ぐなキュウリというのは農薬を使っているからなんですね」という。そんな風に言ったら、「あ、そうなんですよ」ということになるじゃないですか。そしたら、間違った情報がどんどん蔓延する元になってしまうので、できれば正直な売り方をした方がいいかなと思います。
ちょっと最後もう一度、まとめということなんですけれど、「農薬を使ってキュウリが真っ直ぐになります」といったことはないですということです。まっすぐなキュウリというのは、農家の努力と技術によって作られています。そういうことと理解していただければと思います。
というわけで、今日も淵上ラジオ最後までお聴きいただきありがとうございました。
また別の機会にお会いしましょう。バイバーイ。
イラストレーション:竹村おひたし