食品安全リスクの大・小、プロと消費者の意識の差って? 渕上桂樹の『渕上ラジオ』(第20回)
パーソナリティ:渕上桂樹 農業コミュニケーター
どうも皆さんこんにちは。
農業コミュニケーターの渕上桂樹です。今日も渕上ラジオをやっていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
食品安全リスクの大・小、プロと消費者の意識の差って? 渕上桂樹の『渕上ラジオ』(第20回)はこちらから聴けます。
食品安全ってなに?
私は仕事は飲食店をやっているんですけれども、それをやりながら、内閣府の食品安全委員会というところのモニターをやっています。
食品安全委員会って何なのかというと、内閣府が運営している組織で、食品安全全般について、安全やリスクコミュニケーションなどを学んだり、意見交換をしたりできる場です。そこでいろいろと勉強させていただいています。
食品安全について考えると、皆さんは何を思い浮かべますか。食中毒や異物混入、カビ毒、放射性物質、農薬など、いろいろと出てくると思います。本当に食品安全にはさまざまな要素があります。
その中で、食品安全委員会で特に重要視されていると私が感じるのは、食中毒の話が非常に多いという点です。あとは異物混入です。
これは実際、私が以前食品スーパーで働いていたときも同じでした。食品スーパーでも食品安全については非常に厳しく言われますが、その中でも特に厳しかったのが、食中毒と異物混入でした。
飲食店をやっている方、特に大きなチェーン店の飲食店などでは、食中毒や異物混入についてかなり厳しく指導されると思います。保健所の方と話していても、やはりその点は強く言われます。
一方で、介護施設など、いわゆる「食に関わるプロ」の現場では、また少し違った食品安全の重要ポイントがあります。介護の現場の方と話していると、誤嚥事故防止について非常に重視している印象を受けます。
誤嚥事故というのは、飲み込む力が弱かったり、飲み込み方を誤ったりして、食べ物が気道や気管支に入ってしまう事故のことです。こうした事故を防ぐことが重要視されています。私たち一般的な飲食店では、なかなかそこまで考えない部分ですが、介護のプロの方々はしっかり考えているなと感じます。
一方で、全然違うなと感じるのが、一般向けに語られる「食の安全」です。食の安全について話し合いましょうという場に誘われて行ったり、一般向けの「食べ物は危ない」「これは安全・危険」といった内容の本や記事を読むと、よく出てくるのが農薬や食品添加物、遺伝子組換え作物といった話題です。
食品安全リスクの大・小、プロと消費者の意識の差
プロとして食品安全に関わる現場と、一般向けに語られる食の安全とでは、かなり違いがあるなというのを、以前から強く実感していました。
実際に、内閣府が出しているグラフがありまして、「食品安全について、何がリスクが大きいと思いますか」という質問を、食品安全の専門家と一般消費者それぞれに聞いた結果を比較したものです。
そのグラフを見ると、両者ともに「重要だ」と答えた項目もあれば、どちらもあまり重要視していない項目もあります。一方で、専門家は重要だと考えているのに一般の人はそう思っていないもの、その逆もあって、とても興味深い内容でした。
差があまりなかったものとしては、たとえばタバコです。これは専門家も一般消費者も重要だと考えています。逆に、どちらもあまり重要だと答えなかったのが大豆イソフラボンで、重要だと答えた人はどちらも1%程度でした。
大きな差があったのが食品添加物です。食品添加物を「食の安全上、大きなリスクだ」と答えた専門家は5%しかいなかったのに対し、一般消費者では42%もいました。
食品の焦げについても同様で、プロの人は3%しか重要視していなかったのに、一般消費者では29%が重要だと答えています。
残留農薬も差が大きく、プロの人は16%、一般消費者では30%でした。遺伝子組換え食品に至っては、プロの人で「リスクが大きい」と答えた人は0%だったのに対し、一般消費者は12%がそう答えています。
私たちが気を付けられること
このように、一般消費者が実際よりもリスクを大きく感じているもの、逆に小さく感じているものがあり、実際のリスクとの間に大きなズレがあると感じます。
一般向けに発信されている食品安全の話題では、農薬や添加物、遺伝子組換え作物についての話が非常に多いのですが、これらは自分たちで気をつけようがない部分が多いとも感じます。
普通の生活をしていて、残留農薬がどれくらい使われているか、どんな農薬が使われているかを把握するのはとても難しいですよね。食品添加物も同様で、何がどれくらい使われているかを消費者が正確に知るのは簡単ではありません。遺伝子組換え作物も、自分たちで直接どうこうできるものではありません。
その一方で、食中毒は自分たちで気をつけられるところです。正しい手洗い、食品の保存方法、適切な加熱調理など、一般の人にとっては、むしろこちらのほうが重要なのではないかと思います。
しかし、そうした「自分で気をつけられる分野」については、一般向けの食品安全の発信ではあまり取り上げられていないように感じます。
こうした違いがなぜ生まれるのかについては、また改めてお話ししたいと思います。
食品安全と言っても、リスクの大小があります。大きなリスクにはしっかり注意し、小さなリスクには過剰に心配しすぎない。実際のリスクの大小に合わせた対応が大切だと思いますが、その詳しい話はまた次回にしたいと思います。
ただ一つ、これだけは確かなことがあります。食品を扱うときは、手洗いだけはしっかりしましょう。これは間違いありません。
食の安全の話し合いの場では、なかなか言ってくれないことですが、とても大切なことです。ぜひしっかり実践していきたいですね。
皆さんも食中毒に気をつけて、安全にお過ごしください。
というわけで、今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。渕上ラジオ、また次回も聞いてくださいね。
それでは、またお会いしましょう。バイバイ。
イラストレーション:竹村おひたし