2025.12.5

With陰謀論の新時代! 渕上桂樹の『渕上ラジオ』(第16回)

渕上桂樹

農業コミュニケーター

With陰謀論の新時代!

パーソナリティ:渕上桂樹 農業コミュニケーター 

どうも皆さんこんにちは。農業コミュニケーターの渕上桂樹です。
今日も渕上ラジオをやっていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

With陰謀論の新時代! 渕上桂樹の『渕上ラジオ』(第16回)はこちらから聴けます

農業デマと陰謀論

私はこの渕上ラジオや、他の媒体でも農業デマについてお話しすることがあります。
農業デマにはいろいろあります。農薬に関すること、日本の農業が海外の影響で乗っ取られてしまうというものなどさまざまですが、共通しているのは「不安を煽る」という点、そしてもう一つは「陰謀論がセットになっている」という点です。

陰謀論とは、巨大な組織が裏で手を回し、秘密裏に大きな力を及ぼしているというようなものです。昔から陰謀論はいろいろあります。農業デマに限らず、「アポロ計画では実際には月に行っていない」「地球は平らなんだ」という笑っちゃうようなものまであります。

大きな力を持つようになった陰謀論

最近は、反ワクチンや反医療というのが増えてきているので、笑っちゃうものというようなレベルではなくなってきました。命に関係するものですね。

それだけではなく、SNSの影響で陰謀論が年々勢いを増していると感じています。

よりそれを決定付けると思ったのが「2024年11月のアメリカ大統領選挙」でした。選挙で勝利したトランプ大統領が「ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏」を次期厚生長官に起用すると発表し、大きな話題になりました。このケネディ・ジュニア氏を私は農業デマのデモで知っていました。

製薬会社がヘリコプターから農薬を撒いて反対派にどうにかしてやろうという「ヘンテコ映画」だったんですけど、それに出演していたんです。この人物も例にもれず、アメリカでの反ワクチンビジネスの中心人物の一人でした。

そんな人物がアメリカの公衆衛生に大きな影響を及ぼすというポストに就くことが大丈夫なのかと、結構アメリカだけじゃなくて、いろんな国でニュースになりました。

私も、アメリカ大丈夫かな?と思ったんですけど、日本もその時他人事じゃなかったんですよね。同じく2024年10月の衆院選だったのですが、その時は日本でも陰謀論を展開する政党が議席を大きく伸ばして話題になったんです。農業デマも言っている政党、参政党ですよね。あとは、参政党じゃないですけれど、ワクチンの陰謀論を熱心に拡散して、発信して、製薬会社から訴訟まで受けている候補の人も当選しました。

日本とアメリカで行われた二つの選挙で「陰謀論」・「トンデモ」を発信する人たちが大きな力を持つようになったというのが、すごく私にとって印象的でした。

だから、陰謀論って昔みたいに一人で妄想の世界で楽しんだりとか、仲間同士で集まってワイワイ盛り上がるというレベルではなくなってきたんです。
信じる人同士が SNS でつながって、お互いの陰謀論を強化し合って思想のようにしてしまって、積極的に政治に働きかけるようになった。そして候補者もその現象を活用する人が次々現れた。陰謀論の人たちを盛り上げて、それを票につなげるという手法を取る人が増えてきたという事です。これは昔に比べて大きな流れではないかと思います。

陰謀論を信じる人との付き合い方

私自身も、陰謀論を信じる人と話す機会が選挙期間中にありました。その人物は「自分は陰謀論者だ」とはっきり言い、「今の日本の農業や農産物は信用できない、毒を食べさせられている」といった酷いことも言いました。私のコラムも読んだみたいで、面と向かってかなり厳しいことを言われました。対面で言われるという事はつらいものもあったのですが、じっと話を聞き、「あなたはそう考えるんですね」と真剣に話を聞きました。真剣に聞いて、関係のない話も含めてさまざまな話をしました。

その経験から強く思ったのは、「陰謀論やトンデモ情報がどんどん影響力を持つようになって、勢いを増して力を持つこの世の中で、陰謀論を無いものとして無視して扱うわけにはいかなくなってきたんじゃないか」ということです。

陰謀論は良くないとばかりも言っていられなくなったんじゃないかと思います。だからこそ、陰謀論と「うまく付き合っていく社会」を作らないといけないんじゃないかという風に思いました。

これはコロナみたいな感じです。ゼロコロナって目指そうとしても、もう多分無理で、うまく付き合っていく「Withコロナ」とか言われたじゃないですか。

それと同じで、陰謀論も「With陰謀論」「Withトンデモ」の時代を作っていかなければいけないんじゃないかなって、そんな風に思っています。ただ、それは今まで無かったことなので、どんな風に作っていけばいいのかはわかりません。

一番大事なのは、陰謀論を信じる人たちを「あいつらは違う人なんだ」という風に、分断してしまうことがないようなやり方を考えなければいけないというふうに思っているところです。

陰謀論とうまく付き合っていく時代へ

実際、私が先ほど話した陰謀論を信じる人と話した際にぼろくそ言われたんですが、その時にじっと話を聞いたら、最後の方では「君の言いたいことは分かるよ」「何かあったら声をかけてね」という事まで言ってくれたり、「何か僕らにできることがあったら声かけてね」と言ってくれたり、まぁまぁ仲良くなりました。「頑張ってね」という風にも、最後に言ってもらえたんです。

どんな風にすればいいのかはまだ分かりませんが、ちょっと希望が持てました。陰謀論やトンデモと上手に付き合っていくという時代を何とかして創れるんじゃないかと思います。ただ、どういう風にしたらいいのかはわからないです。対話を深めていくのか、部分的に意見を認めてやっていくのか、どうしたらいいのか分からないですが、本当に大切な公衆衛生や命に関わることを守るためにも、うまく付き合っていくことが必要なのではないかと思います。

簡単ではありませんが、「トンデモ」とか「陰謀論」を信じる人たちだけが集まって考えを先鋭化させていく状況だけは防ぎたいと思っています。

渕上ラジオ、今日も最後までお聴きいただきありがとうございました。


また別の機会にお会いしましょう。バイバーイ。

イラストレーション:竹村おひたし

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