2025.12.24

おおた歯科クリニック(中野区・中野駅) 太田広宣 院長|ビジネスパーソンおすすめの歯周病対策

おおた歯科クリニック(中野区・中野駅) 太田広宣 院長

おおた歯科クリニック 太田広宣 院長

歯周病はSilent Disease(静かなる病気)といわれ、自覚症状がなくとも静かに進行していく。放置することで、全身の健康を脅かす可能性もある。では、歯周病とどのように向き合い、ケアをすべきなのか。日々の心構えや良い歯医者の選び方などについて、おおた歯科クリニックの院長であり、歯周病専門医でもある太田広宣氏に話を伺った。

35〜69歳までの間で約8割が発症している歯周病とは?

――まず、歯周病とはどのような疾患かをお聞かせください。

太田 歯科の二大疾患には、虫歯と歯周病があります。そのうち歯周病は、読んで字のごとく「歯の周りの病気」です。

歯周組織は、歯肉・歯根膜・セメント質・歯槽骨の4つに分かれます。何らかの原因でいずれかの部位に炎症が起こると、歯周病を発症します。病態としては、痛みを伴わずに進行することから慢性疾患に該当します。

参照:歯周病ってどんな病気?

画像提供:おおた歯科クリニック

――歯周病を発症する原因としては、どのようなものが挙げられますか?

太田 歯周病は、易感染性(いかんせんせい)と呼ばれるほど、簡単に感染しやすい疾患です。発症の要因としては「人から人への感染」が考えられます。

もともと私たちは、母親のお腹の中にいるときには歯周病細菌を持っていません。しかし、離乳食を口移しで食べたり、家族が使用したスプーンを使ったりすると、細菌に感染して後天的に歯周病を発症することがあります。

――歯周病は感染力の高い疾患なのですね。実際にどのくらいの割合の方が発症しているのでしょうか?

太田 厚生労働省の「令和5(2023)年患者調査の概況」によると歯肉炎及び歯周疾患の患者さんは1135万人と言われています。前回調査(令和2年)と比較して275万人も増加しています。「令和4(2022)年歯科疾患実態調査 」によると、歯肉出血を有する者の割合は総数で約5割、4mm以上の歯周ポケットを持つ者の割合も総数で約5割、45歳から4割を超えることが報告されています。しかし、実際に歯科で治療している方は、人口の約1割の1135万人ですから、ほとんどの方が歯周病を発症していることに気づかないまま治療に向かわず進行してしまっているといえます。

――多くの方が歯周病に感染しているにも関わらず、実際に歯科に通っている方は少ないのが現状なのですね。では、どのようにセルフチェックをしたら、早期発見につながるでしょうか?

太田 まずは「歯にものが詰まりやすくなっていないか」「歯に隙間が空いてきていないか」「歯茎の色が淡いピンク色かどうか」「歯磨きをしたときに血が出ていないか」「口臭がないか」を確認することが大切です。複数該当する場合は、一度かかりつけの歯科医院にご相談ください。

参照:歯周病チェックリスト

画像提供:おおた歯科クリニック

生活習慣の乱れが歯周病のリスクを高める

――どのような生活習慣を送っている方が歯周病になりやすいのでしょうか?

太田 喫煙習慣があると、血行が悪くなり、歯周病が進行しやすくなります。また、食生活の乱れや睡眠不足は免疫力の低下を招くため、歯周病のリスクを高めます。特に栄養に配慮された食事をとることは重要です。

たとえば、糖質や脂質、アルコールを摂取しすぎると、全身疾患のリスクが高まります。そのため、できる限りたんぱく質が含まれる食材を取り入れるのがおすすめです。

現代は歯や歯肉だけに配慮するのではなく、医科や歯科、その他の領域を含む多職種連携が求められます。そのため、当院では管理栄養士を配置し、患者さんが食に関する知識を身につけ、健全な食生活を送るためのサポートをしています。

歯周病はビジネスパーソンにさまざまな悪影響をもたらす

――ビジネスパーソンが歯周病になった場合、どのようなデメリットが起こるのでしょうか?

太田 たとえば、歯周病によって歯茎が腫れている場合は食事がしにくくなるため、ビジネス上のお付き合いで会食に行くのが難しくなるかもしれません。あとは、口臭によって、相手に不快感を与えてしまうこともあります。

特に接客や営業に関わるビジネスパーソンの場合、人と接する機会が多くなるため、デメリットになるでしょう。

――全身疾患に関連するものだと、どのようなリスクが想定されるでしょうか?

太田 全身疾患で最も関連があるのは糖尿病です。糖尿病患者の歯周病発症率が高いことから、歯周病は腎症・網膜症・神経障害・脳梗塞・心筋梗塞に続く6番目の合併症ともいわれています。

これ以外に、低いエビデンスですが合併の可能性が考えられる疾患としては、動脈硬化やアルツハイマー、脳梗塞、心筋梗塞、高血圧、脂質異常症、悪性腫瘍、関節リウマチなども考えられます。

ビジネスパーソンのための歯周病ケアと歯周病治療

――歯周病の治療方法にはどのようなものがありますか?

太田 初期の歯周病であれば歯のクリーニングで治療できます。中等度から重度になってくると、歯茎が腫れ、膿が出てきたり骨がなくなったりします。この場合は外科手術が必要です。

歯周病の手術には、切除療法と再生療法の2つがあります。昨今では、再生療法によって、薬を使用し、骨を移植して歯を延命させる方法が主流です。

――それぞれの治療法にかかる期間はどのくらいになるでしょうか?

太田 患者さんのレスポンス(歯肉の反応)や健康状態にもよりますが、初期の場合は歯科に通っていただければ1〜3ヶ月以内に回復が見込めます。中等度の場合は6ヶ月以内、重度の場合は1年半〜2年以上の治療期間が必要です。

――重度の歯周病になる前に進行を食い止める必要があるのですね。歯周病の予防や進行を妨げるためには、どのようなケアが求められますか?

太田 ホームケアと歯科医でのケアを組み合わせたケアが必要です。

ホームケアでは適切な回数で正しく歯磨きをしたり、デンタルフロスや歯間ブラシでケアしたりすることが大切です。あとは、ウォーターピック(口腔洗浄器)で口の中を洗浄する方法や、歯垢染色液を使って歯垢をチェックしながら歯磨きする方法も効果的です。

ホームケアに使われるデンタルフロスや歯間ブラシなど

歯科医院では、口腔環境をチェックしていきます。当院では、マイクロスコープと呼ばれる顕微鏡を使用し、患者さん自身に歯を見てもらっています。目視では確認しにくい歯の裏側をお見せすることで、ケアの効果を実感していただき、治療のモチベーションを上げていただくのが狙いです。唾液で口腔環境を5分で測定できる唾液検査システムも取り入れています。さらに、定期的に歯の表面や歯周ポケット内の歯石やプラークを専門器具で除去する歯石・プラーク除去も行います。

唾液で口腔環境を5分で測定できる唾液検査システム

太田広宣氏が考える「良い歯医者」の選び方

――太田先生が考える「良い歯医者」の選び方にはどのようなものがありますか?

太田 一番は「相性」だと思います。歯科医院は、予防の意味も含めて定期的に通うものです。人と人との関係性で成り立つものだと思うので、リラックスして通えるかどうかは重要になります。

歯科医院の治療方針は「欧米型」「北欧型」「日本型」の3つに分けられます。歯周病治療は、欧米、北欧、日本のいずれもレベルが高いですが、欧米型は、危ない歯については抜歯する傾向が強く、北欧型は、キシリトールが生まれた背景もあり予防を重視した治療が特徴と言えます。日本型は、患者さんとのコミュニケーションを踏まえ、可能な限り選択肢を提示し、その人に合う治療法を提示するイメージです。

それぞれ、どの考え方が良い、ということではなく、大切なのは実際に医師と対面し、ご自身と相性が合うかを確認してみることですね。

――実際に歯科医院に通ってみて、相性の良さを確かめることが大切なのですね。

太田 あとは「医師が患者さんの目線に立ち、必要な選択肢を与えているか」という視点でみていただくのも大切です。

たとえば、お寿司を食べに飲食店に行ったとして、店員さんにおすすめのネタを聞いたにも関わらず、ステーキや焼肉をおすすめされたらどう思うでしょうか?お客様のご要望を無視し、その店の自慢の料理をひたすら提案されたら、きっと良い気はしないでしょう。

歯科医院において重要なのは「患者さんに必要な選択肢を与えること」です。当院では、患者さんの病状を正確に把握したうえで複数の治療法をご提示します。また、私自身の経験も踏まえ、各治療法を選ぶことで想定される経過もお伝えします。そのうえで、最終的には患者さんのご判断で適切な治療手段を選んでいただくよう心がけています。

「Save the tooth」の考えのもと、自分の歯で長く噛んでいただくお手伝いがしたい

――おおた歯科クリニックが実践している「忙しいビジネスパーソンが来院しやすくなるような工夫」があれば教えてください。

太田 ネット予約のシステムは必須ですね。患者さんとしては、夜中でも簡単に予約がとれる点はメリットになります。あとは、患者さんのご要望になるべくお応えするために、じっくり通っていただける雰囲気づくりを意識しています。たとえ遠回りしてでも、患者さんのタイプを正確に見極め、治療目的の達成を第一に考えています。

――それでは最後に、ビジネスパーソンに向けてメッセージをお願いいたします。

太田 まずは健康を第一に考えた生活習慣を送っていただきたいです。歯科医師としては「Save the tooth」の考えのもと、歯を大切にしていただき、ご自分の歯で長く噛んでいただきたいと考えています。

また、皆さまが歯に愛着を持ち、ご自身の歯で長く噛んでいただくお手伝いができれば幸いです。そして「一燈照隅(いっとうしょうぐう)」の精神で、私自身が光を灯し、患者さんや周りの方に明るさをもたらす存在となれれば本望です。

【太田広宣 プロフィール】

おおた歯科クリニック 院長 太田広宣

昭和63年に東京歯科大学卒業。平成7年に太田歯科医院を開設し、平成18年には、おおた歯科クリニックを移転開設。歯周病専門医として、歯科疾患を抱える患者さんと日々向き合っている。

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